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歴史はちょっとした偶然で大きく左右される理由 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿⑫

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公電の引用はできるだけ短く、やり取りの重要箇所のみを紹介する。公電第5234号に筆者は、〈「エ」はモスクワにいる〉と記したが、執務室にいるとは記していない。実はツァレガロッツエフ大統領補佐官とはこんなやり取りがあった。

「エリツィン大統領はどこにいますか」

「モスクワにいます」

「執務室にいますか」

「まだ来ていません」

「国家非常事態委員会に逮捕されたのではないでしょうか。そういう臆測情報が外電で報道されています」

「こちらにそのような情報はありません」

「エリツィン大統領の安否を日本人は心配しています。大統領がホワイトハウス(ロシア政府、議会のある建物)に到着したら、直ちに連絡してください」

そう言って筆者はツァレガロッツエフ氏に大使館の代表電話番号と政務班の直通電話番号を伝えた。ツァレガロッツエフ氏は「必ず連絡する」と約束した。それから1時間もしないうちに同氏の秘書から筆者に「ツァレガロッツエフさんからの伝言ですが、今、エリツィン大統領が執務室に入りました」との電話があった。

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