公電の引用はできるだけ短く、やり取りの重要箇所のみを紹介する。公電第5234号に筆者は、〈「エ」はモスクワにいる〉と記したが、執務室にいるとは記していない。実はツァレガロッツエフ大統領補佐官とはこんなやり取りがあった。
「エリツィン大統領はどこにいますか」
「モスクワにいます」
「執務室にいますか」
「まだ来ていません」
「国家非常事態委員会に逮捕されたのではないでしょうか。そういう臆測情報が外電で報道されています」
「こちらにそのような情報はありません」
「エリツィン大統領の安否を日本人は心配しています。大統領がホワイトハウス(ロシア政府、議会のある建物)に到着したら、直ちに連絡してください」
そう言って筆者はツァレガロッツエフ氏に大使館の代表電話番号と政務班の直通電話番号を伝えた。ツァレガロッツエフ氏は「必ず連絡する」と約束した。それから1時間もしないうちに同氏の秘書から筆者に「ツァレガロッツエフさんからの伝言ですが、今、エリツィン大統領が執務室に入りました」との電話があった。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録頂くと、週刊東洋経済のバックナンバーやオリジナル記事などが読み放題でご利用頂けます。
- 週刊東洋経済のバックナンバー(PDF版)約1,000冊が読み放題
- 東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
- おすすめ情報をメルマガでお届け
- 限定セミナーにご招待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら