目標設定で波を起こせ!荒れやすい「魔の6月」を乗り越える学級経営の極意 渡辺道治が「むしろチャンスの時期」と考える訳

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ゴールデンウィーク明けは「第2の学級開き」といわれるが、子どもたちの変化を受け、学級経営に不安が出てきた教員もいるのではないだろうか。5月が終わると、いわゆる「魔の6月」がやってくる。学級が荒れやすくなるといわれるこの時期を乗り越えるには、どのような視点やアプローチが必要なのか。小学校教員の傍ら、講演や執筆などを通じて、学級経営や教師のあり方について発信を行う渡辺道治氏が助言する。

いわゆる「魔の6月」とはどんな時期?

教師の世界に、「魔の6月」や「魔の11月」という言葉があります。この時期になると、多くの学級で子ども同士の関係の軋轢や、いじめ・物隠しなどのトラブルが起きやすくなることから、このように呼ばれています。しかし、なぜこの時期に問題が頻発するのでしょうか。

渡辺道治(わたなべ・みちはる)
小学校教員の仕事の傍ら、通算200回以上の講演活動や、福祉施設や医療施設での演奏活動、書籍・雑誌・新聞などの執筆活動を展開する。ユネスコやJICAによるアジアを中心とした教育事業や、初等教育算数能力向上プロジェクト(PAAME)においてアフリカの教育支援にも携わるなど国内外において活動中。公立小学校勤務を経て、2022年度より瀬戸SOLAN小学校教諭。23年度から米ダラスの補習校における年間学習指導アドバイザーも兼務。『学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える』(学事出版)、『子どもと心でつながる教師の対話力』(学陽書房)、『BBQ型学級経営』(東洋館出版)など著書多数

新年度が始まったばかりの頃は、子ども間の関係性や、教師と子どもとの関係性において、よい意味でも悪い意味でも「距離感」が存在します。相手の様子をうかがったり、よい関係を築こうと気を使ったりする姿が散見され、こうした状況では大きなトラブルが起こりにくいのは容易に想像がつくはずです。

しかし、数カ月経つと、その距離感がなくなっていき、これまたよい意味でも悪い意味でも「慣れ」が生じます。慣れとともに、普段の生活を送るうえでさほど多くの熱量を必要としなくなるため、子どもたちのエネルギーが余ってきている状態であるともみることができます。

とくに6月や11月は、大きな行事もなく、エネルギーをぶつける対象が少ない状況にあることが少なくありません。さらに、教師も年度当初の勢いが日々の疲れとともに減退してくる時期であるともいえます。

学級開き当初は存在した「距離感」が徐々に薄れ、子どもたちのエネルギーが余っている状態と教師のエネルギーが減退している状態が重なり、それらが引き金となってさまざまなトラブルが頻発するようになる。

これが「魔の6月」「魔の11月」と呼ばれるゆえんであると私は考えています。こうした「リスクが高まりやすい時期」を乗り越えるには、1年間の学級経営をどうマネジメントしていくかという大きな視点が必要になります。

「短期目標」で小さな波を起こし、意欲を高める

「成長曲線」という言葉があります。多くは人間の身体的発達の程度を表すために使われますが、学力や企業の成長を表す場合にも用いられます。例えば、企業の成長曲線には、事業を軌道に乗せていく「導入期」、売り上げが伸びる「成長期」、事業が安定する「成熟期」、業績が落ちてくる「衰退期」と、主に4つのステージがあるといわれます。

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