三菱自は新たな中期経営計画(2023~2025年度)でも、シェアが大きく、成長の見込める東南アジアやオセアニア、中東・アフリカ、中南米に投資の重点を置くことを決定。中国は欧州や北米と並んで、日産自動車、ルノーとのアライアンスに頼る姿勢を鮮明にしている。経営資源の限られる中堅メーカーだけに、選択と集中を進める必要があるわけだ。
加えて、中国ならではの事情もある。中国事業は、現地資本である広州汽車集団との合弁で進めている。どうしても現地企業の意向に引きずられやすい。「言うことを聞かず、アンコントロールの状態になってしまっている」(三菱自幹部)という。
そもそも中国での販売不振の背景にあるのが、現地で急速に進むEVシフトに対応できていないことがある。中国市場は政府の優遇措置もあり、2022年の新車販売台数に占めるEVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車の比率は25%に達した。その分、エンジン車の市場が圧迫された。
中国市場ではEV大手のテスラやBYDに加えて、現地の民族系メーカーが次々とEVを投入している。対して三菱自が販売するEVは、広州汽車から供給を受ける1車種のみ。
足元で日系メーカーの販売が軒並み減少
中国での販売不振は、日系自動車メーカーに共通する問題だ。2023年1~3月期の販売台数は、前年同期比でトヨタ自動車が14.5%減、日産が36.8%減、ホンダが37.7%減と軒並み大きく減少している。半導体不足もあるが、各社ともEV投入が遅れているため、現地メーカーにシェアを奪われているとみられる。
各社は巻き返しに躍起になっている。トヨタはEV専用ブランド「bZ」シリーズの2車種を2024年に投入。ホンダもEVブランド「e:N」シリーズの3車種を同じ2024年に、日産もEVを含む電動車7車種を2026年までにそれぞれ投入する。
自動車業界ではソフトウェアがクルマの価値を定義する「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」の考え方が広がる。4月の上海モーターショーや1月のアメリカでのCES(家電見本市)では、エンターテイメントやソフトウェアアップデートによる性能の更新・向上といった、商品価値をソフトウェアに見いだす動きが目立った。
単にEVを出すだけでなく、従来の車にはなかった商品価値を提案することが求められている。ホンダの三部敏宏社長は「(中国勢は)ソフトウェアデファインドも進化していて、われわれが想定している以上に先を行っているという認識をしている」と危機感を示す。
日系の大手自動車メーカーにとって中国市場の存在は北米と並んで大きい。会社全体に占める中国での販売台数は、トヨタが2割、日産とホンダが3割を占める。4%の三菱自と比べて、中国事業は格段に重要だ。
とはいえ、EVでの競争は激化する一方で、米中対立を含めた地政学リスクも高まっていく。三菱自の動きは日系自動車メーカー各社にとっても他人事ではない。
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