中国の自動車市場で外国メーカーは長年、上海に住むツァオ夫妻のような高級ブランド志向の消費者を引きつけてきた。だが、今ではその力を失いつつある。
ベン・ツァオと妻のレイチェル(ともに36歳)は2台所有していたポルシェを1台に減らし、29万ドルするガソリン車のスポーツカー、ポルシェ911に乗り換えた。そして、ツァオ夫妻にとっては初めてとなる電気自動車(EV)を購入する。中国の理想汽車(リ・オート)が設計・製造した7万ドルのSUVだ。
ビジネスコンサルタントをしているベン・ツァオが言う。「リ・オートの車に乗って、まず感じるのは高級感だ」。
世界最大市場で起きていること
今や世界最大の自動車市場となった中国では、国内メーカーがこれまで中国の巨大な顧客層から利益を掘り起こしてきた外国メーカーを蹴散らすようになっている。ツァオのような消費者や中国の自動車会社が、ほとんど誰も予想していなかった速度でEVを受け入れるようになったためだ。
中国の自動車会社(その多くは工場が立地する都市の地方政府から補助金を受けている)の台頭は、EV市場における中国の支配力を示すものともいえる。現在、世界のEVのほとんどを製造・販売しているのは中国で、その力はEVのバリューチェーン全体に及んでいる。
中国はEVに搭載される電気モーターのほとんどを製造し、リチウムイオン電池に使われる化学物質の大半を精製。次世代技術と目されるナトリウムイオン電池の開発でも先行する。