日本より便利?アジア各国「空港鉄道」最新事情 市内の駅で飛行機の搭乗手続きができる都市も

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地理不案内な旅行者にとってのわかりやすさという点では、空港アクセス路線の駅に行けば「確実に空港行き電車に乗れる」独立した路線に軍配が上がる。

KLIA Exspres 駅
クアラルンプールの空港鉄道、KLIA Ekspres乗り場。空港と市街地を結ぶ1路線だけなのでわかりやすい(筆者撮影)

日本では「基本的にどの列車も羽田空港に行く」東京モノレールを除けば、あとは京成線の日暮里駅でスカイライナーのホームが別になっているくらいで、羽田空港行きの京急線や成田空港行きの京成線・JR線はほかの列車と共用の駅・ホームに発着する。

東京訪問中の欧州人ビジネス客からこんな話を聞いたことがある。「羽田から新宿に行こうとすると鉄道の乗り継ぎが大変。成田エクスプレスで直行した方が便利で快適」というのだ。電車代の多寡を気にしないビジネス客から、都心に近い羽田の方が「かえって不便」という感想を聞いて驚いた。「羽田空港アクセス線」も、おそらく東京駅や上野駅で羽田空港行きに乗る際、大船以遠に行く東海道線や品川止まりの常磐線の列車などと同じホームから乗ることになるだろうが、外国人が確実に空港に行きつけるだろうか。

ただし一方で、路線が独立したアジア各国の空港アクセス鉄道は、利用する際に在来線や地下鉄などの改札を出て長い通路を歩くという面倒を強いられることが多いほか、独立した路線のために切符を買い直さないと乗れないことも多い。慣れない旅行者にとって「空港行き列車の切符を新たに買う」というのは手間がかかる点の1つといえる。

それぞれに一長一短があるが、一口に空港アクセス鉄道といっても、既存路線を活用してネットワークの利便性を重視する日本と、新規に独立した路線を敷いたことで単純明快なルートとなっているアジア各国との違いが見て取れる。

「優等列車」がある空港鉄道はどこ?

速達列車の有無も日本との違いの1つだ。日本の場合は京成「スカイライナー」やJR東日本の「成田エクスプレス」など、追加料金が必要な速達列車と料金不要の一般列車があり、さらに一般列車にも快速などの速達タイプが存在する。東京モノレールにも速達列車がある。

一方、先述したアジア8都市の空港鉄道の場合、速達列車と各駅停車の2種類を運行しているのはソウル・台北・クアラルンプールの3都市だ。このうちソウルは速達列車用のチケットがあり、料金も普通列車タイプより割高だ。一方、クアラルンプールと台北は速達・各停とも同一料金だ。

ソウルの場合は、各駅停車タイプの「一般」と途中無停車の特急タイプ「直通」がある。両者の所要時間の違いは16分。各駅停車はおよそ12分ごとに出発するのに対し、「直通」は40分間隔で運賃もほぼ倍額だ。だが、「直通」は、リクライニング付きクロスシートの快適性、途中で乗客の出入りがないことによる荷物管理の安心感などを加味すると、現地事情に慣れない旅行者には利用しやすい。

仁川空港鉄道A'REX
ソウルの仁川空港鉄道A'REXの「直通」列車。ノンストップで車内はクロスシートだ(筆者撮影)

バンコクは当初、空港行き特急と各駅停車の2本立てでスタートした。しかし、空港アクセス特急の利用者が相対的に少なく、その後の郊外開発で旅客需要が増えたことで空港線が通勤列車の役割を担うことになった。そうした経緯もあってか、現在では各駅停車のみの運転だ。

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