「SNSを否定する親」がわかっていない子への弊害 今の子は親とは違う新しい時代を生きている
尾原:僕らの世代には、「勝ち組」という言葉に象徴されるように、「世の中には正解が存在していて、その正解にぴったり合わせられた人だけが勝ち残れる」という価値観が根強い。でも今は、正解が存在しない、変化の時代です。
また、僕は今51歳ですが、僕らの世代の多くは、社会人になってからネットに“異物”として触れています。でも、iPadが発売されてから13年経ち、もの心ついた時からITに触れている人たちが中高生になっています。
情報をギブすることが当たり前になっている
尾原:昔は、情報を作ったり受け渡したりすることが簡単ではなかったので、僕らの中にはまだ、そういった意識が残っています。でも今は違う。子どもたちは、おもしろいものがあったらすぐにSNSで「これ見て」とシェアしますし、情報をギブ(GIVE)することが当たり前のコミュニケーションを、人生の早いうちから自然にやっています。
SNSに「今日はこれがうれしかった」「こんなことが悲しかった」とアップすると、いろんなコメントがつく。こうしてフィードバックをもらい、「こんな場面で、こんな人が、私のことで喜んでくれるんだ」「こんなときに背中を押してくれるんだ」と感じながら、“オーセンティック”をつねにためています。すでに新しい生き方をしているんです。
でも、そういった新しい生き方を知らない親や先生たちは、「そんなことをやっていたら勝ち組に入れないぞ」と、僕らの時代の正解を押し付けようとすることも多い。僕らからすると、僕らの成功体験を共有しようとしているだけなのですが、子どもたちには理解できませんし、自分がやっていることを否定されて、自信が持てなくなってしまいます。これは大きな問題だと思います。
おおた:尾原さんは本の中で、仲間の大切さや、人と関わることの幸せを説いています。人とつながり、ケアし合う人間関係が、ネットのお陰で時空を超えてできるようになり、今までにはなかった幸せの感じ方、仲間の作り方ができるようになりました。
一方で、世の中ではまだ、SNSで人とつながることがネガティブに捉えられることも多い。