学びをそれっぽい一般論で終わらせない方法 思考停止をやめて2ミリの差分を積み重ねる

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皆さんには、感情がネガティブに振れるような経験をしたことが少なからずあるでしょう。

たとえば、イベントがとてもつまらなかった、とか、見た映画のクオリティが低かった、とか。ライバルと思っていた人のプレゼンテーションがとても良くて嫉妬の感情が湧きあがった、といった経験もあるかもしれません。本来、このような経験こそ、「前後の差分」をしっかり削り出して、次につなげたい場面です。

しかし、そのような経験は、得てして「あんなプレゼンは大したことない」とか、「自分はなんてダメなんだ」という極端な感情論に終始し、示唆が得られない可能性があります。

感情が高ぶるような経験、特にネガティブな感情に囚われるくらいの大きな経験は、「前後の差分」の宝庫です。しかし、それは心のあり方として学びを得るのにふさわしくありません。感情が学ぶことを拒否して、2ミリ単位の微妙で繊細な「前後の差分」を削り出すことまで至らないからです。

ノイズを減らす「寝かせる」ことの効果

ではどうすべきなのでしょうか。

常に余計な感情を取り除いて、クリアな頭で学びに向き合うことができればそれに越したことはないのですが、人間はそんな器用ではありません。

そんな中でノイズを低減させるには、経験と学びの間にインターバルを作ることが重要です。つまり、あえて一拍(もしくは数拍)置くのです。

しかしインターバルを空ければ、その経験の瑞々しい記憶が薄れてしまいます。そこで、私がおすすめしたいのは、その経験についての事実を描写して残しておく、ということです。

イベントに参加したのだとしたら、その時に起きた出来事を丁寧に描写しておくだけにとどめる。本を読んだのなら、そこで重要だと思った箇所を抜き出すだけにしておくのです。

そこからの「経験前後の差分」という解釈は、その時点では保留状態にしておく。

そして、感情が抜け落ち、その経験の意味を深く考えられるような環境になった時に言葉にすればいいのです。

コラムの冒頭で、平凡な一日こそ貴重な学びの場だというメッセージをお伝えしました。

その意味するところは、つまり、講師がいなくとも、カリキュラムがなくとも、経験の前後に発生した些細な差分を削り出すことができれば、その経験は学びの場になる、ということです。

そして、皆さん自身も、この章を読む前と読んだ後で、「2ミリの差分」は生まれているはずです。その正体は何か。それを「自分だけの具体論」で表現してみましょう。

そうすれば、この「差分」を通じた独学の意味がより理解できるはずです。

荒木 博行 学びデザイン社長

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あらき ひろゆき / Hiroyuki Araki

住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て、株式会社学びデザインを設立。フライヤーやNewsPicks、NOKIOOなどスタートアップ企業のアドバイザーとして関わるほか、絵本ナビの社外監査役、武蔵野大学で教員なども務める。『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』シリーズ(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など著書多数。

 

 

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