学びをそれっぽい一般論で終わらせない方法 思考停止をやめて2ミリの差分を積み重ねる

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そして、この過程を丁寧に重ねていくことで理解することは、「大きな学び」というものはたいてい幻想にすぎない、ということです。

もし私が新入社員で、職場に配属された初日だったとしたら、目にするもの全てが学びになるでしょう。初日はその学びの大きさに圧倒され、疲労困憊したはずです。

しかし、同じ仕事を10年続けていたとしたら、一日の学びはどれくらいでしょうか。おそらくほとんどが既知のことで、学びはほぼ存在しない、と言ってもおかしくありません。

つまり、ここまで長い人生経験を積んできた人にとっては、真に新たなことを経験できる機会は少なく、ほとんどの瞬間が既知の枠内だということも言えるのです。

どんなに素晴らしい経験をしたとしても、所詮は誤差の範囲。「前後の差分」という意味における学びというのは大きくなりようがないのです。

学びは些細な2ミリの積み重ね

しかし、たとえそれが「大きくならない」とか「誤差の範囲」であっても、「まったくない」ということではありません。似たように見えて、一日一日は異なり、一瞬一瞬のその経験には必ず何かの変化があります。つまり、まったく同じ経験があり得ない以上、どれだけ小さくとも必ず学びを生み出す「差分」を見いだすことはできるのです。

私はそのニュアンスを伝えるために、「2ミリの学びを削り出せ」という言葉を使っています。

「2ミリ」というのは当然比喩ですが、本質的な学びというのは、それくらい些細なことだということです。大仰な言葉で既知の感想を並べるのではなく、些細だけど具体的な学びを重ねていく。成長というものは、このように「塵も積もれば山となる」という慣用句のごとく、日々の2ミリ程度の学びを積み重ねていくことに他ならないのです。

しかし、いつでも「2ミリの学び」を削り出せるわけではありません。学びを拒否してしまう心境というのは誰にでもあります。

そういう際には無理して適当な言葉にして取り繕うのではなく、一時の感情によって学びを変質させないための行動が必要になります。その点を補足しておきましょう。

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