学びをそれっぽい一般論で終わらせない方法 思考停止をやめて2ミリの差分を積み重ねる

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たとえば、もし身近にセミナーや講演に参加した人がいれば、「そのセミナーで何を学んだの?」と聞いてみてください。

おそらく、大半のケースは、その参加者がセミナーを受ける前から知っていたはずの内容を語るはずです。たとえば「組織には心理的安全性が大事だってことを学んだ」とか「DXができない会社は負けていくんだよね」とか……。

そんなことをどれだけ熱く語っても、先ほどの「経験の前後の差分」(BーA)という定義に照らし合わせれば、その内容は「学び」ではありません。なぜならば、その回答は単なる(A)、つまりセミナーに参加する前から知っていたことだからなのです。

一般論で片づけては、何も見いだせない

もちろん、そのセミナーから何も学ばなかったはずはありません。経験したことには必ず差分が発生していたはずです。しかし、このような凡庸な「学びもどき」が出てきてしまう背景の一つには、「それっぽい一般論」の力があります。

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たとえば、事例に挙げたような「心理的安全性」とか「DX」のような「それっぽい一般論」は、私たちを何か学んだ気にさせてくれる力があります。そして、それと同時に、本来私たちが追求しなくてはならない「差分」の追求の動きに蓋を閉じてしまうのです。

もし私たちが何かを学ぼうと思うのであれば、このような「それっぽい一般論」をそのまま放置してはなりません。

そういう一見きれいでまとまった言葉を排除して、知的な負荷をかけながら、「自分にとって」何が新しい発見だったのか、ということを突き詰めていく必要があります。

ポイントは、隣の人が絶対語れないこと、昨日の自分が語れないことを探すこと。

つまり先ほどの経験を経て、今この瞬間の自分だけしか語れない具体論は何か、ということを削り出していくのです。

この「自分だけの具体論」というのは、おそらくいろいろな前提条件がついた形となり、それほどキャッチーでもなく、無骨な言葉になるはずです。でもそれでいいのです。それこそが、経験から抽出される学びの本質なのです。

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