学校近隣トラブルは生徒自ら「探究学習」で解決、苦情が急増する社会の生き方 騒音でなく「煩音」、クレームは選別して対応を

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実際に、生徒と近隣住民が直接話し合って着地点を決めた事例は存在する。2016年、長野県のとある高校で住民から「部活動の音がうるさい」という声が寄せられた際に、生徒の発案で地域住民と該当の部活動の部員による話し合いの場が実現したそうだ。これは、お互いの状況を理解したうえで折り合いをつけるという前向きな取り組みで、その翌年以降は教職員も交えた形で、現在までさまざまな議題で実施されている。

「学校で町内会に入会したり、学校菜園や行事で採れた野菜などを配ったりと、普段からコミュニケーションを取る方法はいろいろあります。運動会や文化祭の前も生徒自身が近隣へあいさつに回り、本番の日程や、練習のために音が出る時間帯をあらかじめ伝えておくことで、不要な摩擦を減らすこともできるでしょう」

日々のコミュニケーションで心理的距離を縮めていく
( 写真:Fast&Slow / PIXTA)

さらに小野田氏は、こうした近隣トラブルの解決を「総合的な学習(探究)の時間」で取り扱うことを提案している。

「『総合的な学習(探究)の時間』で扱う課題の例として、国際理解、情報、環境、福祉・健康などの諸課題や、地域や学校の特色に応じた課題などが挙げられています。トラブルや摩擦がつねに自分の身近に存在していることを意識し、当事者意識を持って取り組める題材として、学校の近隣トラブルはかなり適しているのではないでしょうか。近隣住民と仲良くなれ、というわけではありません。あくまでも問題解決のための具体的なプロセスや能力、人との関係性を学ぶことが大切です。今後のためにも、不要な摩擦を減らす人間関係や、物事の折り合いのつけ方を知る、よい機会になるはずです」

学校が、「必要性は理解するが自宅の近所にはつくってほしくない」いわゆる「迷惑施設(NIMBY)」と捉えられるようになって久しい。「ただ文句を言いたいだけ」というクレームも増える中、学校側は基準を設けて対応する案件を絞る必要がありそうだ。

一方で、学校や子どもたちが日頃から近隣住民とコミュニケーションの機会を持つことも手だ。お互いの心理的距離を縮めつつ、必要に応じて話し合いの場を持ちながら、相手への配慮や誠意ある姿勢を見せる。その際は、教員だけでなく、当事者である生徒自身が考えて、提案や交渉をすることも大切だ。時間はかかるが、学校も住民も同じ地域の一員であることを前提に、許容できる着地点を探らなくてはならない。

(文:中原絵里子、編集部 田堂友香子、注記のない写真:zon / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事