学校近隣トラブルは生徒自ら「探究学習」で解決、苦情が急増する社会の生き方 騒音でなく「煩音」、クレームは選別して対応を

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「例えば赤ちゃんの泣き声や子どもがピアノを弾く音は、身内なら大して気にならなくても、他人にとっては耐えられないほどうるさく感じることがあります。心理的な距離からくる負の感情を克服するには、相手に誠意ある対応をしなければなりません。橋本先生はこれを、問題解決のためには技術的なアプローチが半分で、残りの半分は心のアプローチであるとして『半心半技』と表現しています」

誠意ある問題解決の前提として、地域住民が学校から受けている被害がどれほど苦痛なものかは本人にしかわからない点を意識すべきだと小野田氏は強調する。過去には、高齢の近隣住民が「エアコンの室外機の騒音に耐えられない」として高等学校を訴え、裁判に発展したケースもある。その住民は内職で生計を立てていたが、騒音で集中できず仕事を辞めることになったほか、睡眠障害や頭痛、じんましんなどを発症していたそうだ。

「イメージとして、学校との近隣トラブルで当事者となる住民は、社会のたった1%程度の存在です。その1%の人たちに対して、99%の部外者が『それぐらい我慢しろ』と非難しているのが現在の構図です。子どもたちが学ぶ権利もありますが、住民が平穏に生活する権利もあります。実際に前述の裁判では『学校の室外機の騒音は、原告住民の受忍限度を超えている』として、学校側に対応を命じる判決が下りました」

「学校が先にあった」「こちらが先に住んでいた」といった先住権や、「学校には公共性がある」という論理で錦の御旗を掲げれば、学校と近隣住民との関係性は冷え切り、不必要な事件が起きてしまう可能性もある。相手に気遣いや配慮を示し、丁寧に対話をすることが求められる。

クレームの約9割は理不尽な難癖や嫌がらせ

一方で、学校には日々さまざまなクレームが寄せられるが、ほとんどの場合は学校側も精いっぱいの対応をしているのが現実だ。「校庭の砂ぼこりが舞ってくる」と言われればスプリンクラーを設置し、「部活の声出しがうるさい」と言われれば防音壁を立てたり窓を開けずに活動させている。登下校中の話し声を分散させるため、学年ごとに通学路を分けた例もある。

「社会的な寛容性がなくなってきたうえ、残念ながら公務員バッシングの流れもあって、憂さ晴らしで文句をつける人もいます。一昔前と違い、電話やメール、ホームページの問い合わせフォームなど学校への連絡手段も増えました。その結果、より多くの意見が届くようになり、現在クレームの約9割は理不尽な難癖や嫌がらせなのです。未成年による犯罪が起こればすぐに学校が特定されてSNSで炎上し、無関係の人からも抗議の電話がきます。学校側も、本当に対応が必要なものかどうか見極めていく必要があります」

「探究学習」で子どもたち自身が問題解決を

近隣トラブルが起こった際、トラブルの真の当事者は子どもたちであることも多い。登下校や部活動でのマナーや音が論点の場合、住民に迷惑をかけているのも、そうした活動の必要性があるのも子どもたちだ。しかし、実際に住民に説明や謝罪をするのはほとんどの場合が教員だろう。生徒は、教員と住民によって一方的に自分たちの行動を規制されることになる。この状況について、小野田氏は「問題を生徒自身に投げかけるべき」と考えている。

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