「コンゴ民話」に日本アニメを足すとどうなるか アフロ系アニメ「アフリメ」を始めた彼らの思い

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このことから導かれる言説の1つは、日本のアニメーターにとって、髪や肌の色を含め、黒人や褐色人種の特徴をとらえることがいかに難しいかということである。ほかの文化を扱うときには文化の盗用も課題となる。

しかし、小山田氏もテリー氏もプロジェクトに関わるすべての文化、特にこれまで世界の表舞台に出ることの少なかったコンゴの文化を尊重し、このプロジェクトを本物にするための手段を作る考えだ。

「コンゴの正しい要素や伝統をしっかりとスクリーンに映し出したい」と、小山田氏。「そこで、日本のチームをコンゴに派遣し、キンシャサの歴史家や現地に住む人々の声を聞き、触れ、匂いを嗅ぎ、人々の振る舞いを見てもらう。そうすることでアーティストは、本で読んだり、映画を見たりするよりもよりよく理解できるはずです。このプロセスは、本物らしさを保つために特に重要なのです」。

N LITE創業者のクリティアノ・テリー氏と、CEOの小山田真氏(写真:N LITE提供)

マルチメディア戦略でアニメを出していく

もう1つ、課題があるとするならば今後、アニメ制作の資金を順調に得られるかだろう。「マイノリティによるマイノリティのコンテンツベンチャーがアメリカで投資家を得るのは容易なことではない」と、テリー氏は話す。「そうした中で、このプロジェクトを支援してくれるパートナーを探すには世界に出なければならなかったが、ありがたいことに支援をしてくれるパートナーが見つかった」。

今後は映画やアニメのシリーズを制作していく考えで、どちらも劇場公開と配信を基本に考えている。が、「マルチメディア企業」と銘打っているN LITEは映画や「テレビだけでなく、例えば、映画を制作する前に漫画とグラフィック・ノベル(海外版の漫画)を展開したり、シリーズと同じタイミングでスマホゲームを出したりと、漫画やグラフィック・ノベル、ウェブアニメ、ゲームなども展開したい」(テリー氏)。

さらに、将来的には日本に自社スタジオを設立し、「すべて自前のアニメを制作したい」(テリー氏)と意欲的だ。そのためには「『ムフィンダ』を通じてわれわれがどれだけのことができるかを世界に示さなければいけません」。

「日本におけるアフリカ系の人々の表現は西洋、特にアメリカというレンズ、そしてアメリカメディア、つまりヒップホップを通して流されることが多い」とテリー氏は説明する。『ムフィンダ』などこれまでとは違うアフリカ系の物語を伝えることで、こうした凝り固まったイメージを変えていけるだろうか。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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