やっぱり日経平均株価の「3万円回復」は難しい ようやく今年の株価の高値と安値が見えてきた

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その意味でも、市場関係者は2月の大きな材料として24日の植田和男・次期日銀総裁が衆議院の議院運営委員会で行う「所信聴取」に注目していた。日銀の正副総裁人事は、衆参両議院の議員運営委員会での各候補の所信聴取や質疑を経て両院の本会議で採決、承認されれば3月半ばまでをメドに内閣が正式に任命する予定だ。

「植田日銀総裁」との報道が流れた2月10日のドル円相場は129円80銭台~131円80銭台だったが、聴取直前では135円台をつけていた。植田氏が金融政策の引き締めを急がないとの見方が広がったことに加え、アメリカの金融引き締めが長期化するとの観測が広がったからだ。

世界中の市場関係者も注目する中、私は24日の植田氏の所信聴取での「ファーストボイス」にネガティブサプライズはないとみていたが、予想どおりだった。

植田氏は、所信聴取で「現在の金融政策は副作用をもたらしているが、経済・物価情勢踏まえると必要かつ適切な手法である」「物価は来年度半ばにかけて2%を下回ると予想している」「金融政策はコストプッシュの一時的な物価高には反応しない」などと現在の日銀のスタンスを踏襲した慎重な発言に終始したように思う。

質疑では、自分の言葉でわかりやすく説明、安定感のある高いコミュニケーション能力を披露した。これはマーケット参加者に安心感を与えたのではないか。為替にも大きな動きはなく、株価も上昇して24日の取引を終えている。

日米中央銀行の金融政策会合や経済重要指標に注目

今後の株価を見るうえでは、3月以降の日米の中央銀行の金融政策決定会合やマクロの重要指標などに注目したい。3月以降3カ月の主なイベントは以下のとおりだ。

まず、3月9~10日には日銀金融政策決定会合がある。黒田総裁の最後の金融決定会合で、何らかの金融政策の変更があるのかどうか(私はサプライズなしとみている)。その後は10日のアメリカ雇用統計、14日の同CPI(消費者物価指数)、17日の同オプションSQ(特別精算指数)算出、21~22日のFOMC(連邦公開市場委員会)がある。改めてアメリカの利上げのペースがどうなるかに注目だ。

4月には7日のアメリカ雇用統計のあと、8日には黒田日銀総裁が任期満了を迎える。その後は12日のアメリカCPI(消費者物価指数)を経て、27~28日には植田新体制下での日銀金融政策決定会合に大きな注目が集まりそうだ。

5月のFOMCは3~4日だ。6月も利上げがささやかれるなか、アメリカの利上げ打ち止め期待が高まるかどうかに注目だ。

日本株はアメリカ株に比べて、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの指標面で割安とされる。だが「世界の景気敏感株」という顔を持っているため、結局はアメリカ株や中国株の影響を受けやすい。

確かに海外投資家が先物を5週連続で日本株を買い越す(2月第3週まで)と以前に比べ需給環境は改善していると見られる。だが、ここから上値を追えるかは、アメリカ株の堅調な推移や、円安継続が前提になるとみており、とくにナスダック市場や為替の動向を注意深く見守りたい。

(本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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