教員人気を上げるには?大学生の調査に見る「最も現実的な方法」は何か なぜ教育実習後「教員になりたくなくなる」のか

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多くの学生が、プライベートを過度に犠牲にせざるをえないような学校現場の働き方には疑問や不安を感じている。教師という仕事のやりがいや魅力を感じていたとしても、ワーク・ライフ・バランスを無視した状況ではやってられないと思っている人も少なくないし、自分がやっていけるか自信がないというのが、おそらく上記の調査からも推測されることであろう。

ちなみに、学校現場の負担軽減や働き方改革を進めることは、一石二鳥にも三鳥にもなる。教員人気に関係が深いというのが1つ。もう1つは、過重労働や高ストレスで休職や離職に追い込まれる人を減らす効果がある(教員不足の解消に寄与)。さらに、将来教員を目指す人を増やそうといった打算は関係なく、今の多くの子どもたちへのケアや授業の質にも影響する。

教職課程の負担軽減や実習のあり方を検討するべき

第二に、学生に対する負担軽減も重要だ。「教員免許を取るハードルを下げては、質が下がるのではないか」という心配もあろうが、一方で、現行のようにカリキュラムオーバーロードが懸念される状況では、優秀な学生を逃している可能性もある。

教職の専門性は大事だとはいえ、現行は養成段階で相当な負荷をかけており、現場配属後の即戦力志向が強すぎるのではないか。4月に新卒採用された数日後から、いきなり学級担任を任されたり、1人で授業を始めたりすること自体を、もっと問題視するべきだと思う。これは国の役割だ。

つまり、採用後の育成である程度カバーしていけるものは、採用前の履修は少なくていい。ICT活用や特別支援教育など、教員に求められるものは、どんどん高度化、複雑化しているから、仕方がない側面もあるとはいえ、学生の負担や大学などのカリキュラムのあり方も議論していくべきではないか。

また、教育実習は、貴重な現場体験の場であることには疑いがないが、学生にとっても、受け入れ側にとっても負担が重い。そのため実習期間の短縮を検討することが1つ。また、教員不足の状況ではあまり現実味はないかもしれないが、拠点校に実習生を多めに配置する代わりに加配教員をつけたり、その時期だけ指導主事など教育委員会職員も学校で支援する体制を整えたりすることなど、これまでどおりでない方法も考えられるのではないだろうか。

以上、2点提案した。繰り返すが、世の中では多くのことがトレードオフだ。あれもこれも、やみくもに手を出しても、くたびれてしまう。そんな大人の姿を見て、子どもたちはどう思うだろうか。教員人気を左右する最大の広報の場は、今の学校現場にあるのであり、説明会やYouTube上ではない。

(注記のない写真:Greyscale / PIXTA)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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