「親が認知症になる前に"円滑相続"」リアルな費用 認知症になってから対策するのといくら違う?
相続は生と死の二元論で考えてはいけません。オーバーラップするのです。それは2500年前のブッダの「生老病死」の悩みからも明らかです。突然死を除けば、生老病死の4段階で進行します。それが、医療の発展で死に至る過程が長期化して、「法的な死」との間に10年間のズレを生じさせました。
「親が死んで財産を分けるとき、兄弟のあいだでもめたくない!」。皆そう思います。その対策として「親に遺言書を書いてもらおう!」という話も聞きます。しかし、それでは生と死の二元論です。その間に「老と病」があるのです。
その間、親には豊かな老後を送ってもらいたい。できるだけ苦痛少なく。つまり「相続対策」や「終活」以前の「老い支度」こそが必要なのです。
老人ホームに入ったら、年金ではまかなえない
老いを生きるための年金収入の平均額をご存じですか?
国民年金は月額約5万円、厚生年金は月額約14万円が平均です(出典:厚労省「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。これが年々厳しい年金財政のために、減る傾向であることもご存じの通りです。
これに対して介護費用は、施設介護の場合で、月額平均11.8万円です。しかも最も多い分布の人数になるのは月額15万円以上です(生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(平成30年)」)。他に衣食住の費用も要りますから、多くのケースで年金だけでは不足です。
さらに、この調査によると、介護期間の平均は、4年7カ月(54.5カ月)です。
つまり、安く見積もっても、月額11.8万円×54.5カ月=643万円。両親共なら倍とはならなくとも相当な負担です。
別の調査では、介護に手間のかかる認知症では、月額段階からは約2倍、25万円とも試算されています。ここでも認知症の、資金面での恐ろしさがみえます。本稿では介護保険の詳細にまでは踏み込みませんが、こちらも負担額の増加は間違いありません。
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