人工透析求め、原発の町から東京へ、避難者がつきつける重い課題(下)【震災関連速報】
金澤さん(上を参照→こちら)が搬送された東邦大学大森病院腎センターの相川厚教授(日本移植学会・広報委員長)への取材を通じ、震災時の透析医療の課題を探った。
東京・大田区にある東邦大学大森病院は腎臓病治療を専門に行う腎センターを備えている。重症患者の透析に加え、腎移植を年間50例程度行う、腎臓病治療に力を入れる病院だ。
緊急時にはベッド不足で透析時間短縮、透析ネットワーク強化でもなお課題
同病院の相川厚教授(日本移植学会・広報委員長、写真)は、震災時の透析医療について「阪神大震災の時に透析医療について相当問題があったので、47都道府県で災害時のネットワークを起ち上げた。今回の震災はマニュアルもできており透析治療は前進している」と語る。
実際、日本透析医会に加盟している同病院では今回の災害にあたり、人工透析用のベッドを5床用意。ネットワーク下にある病院は緊急時に何床のベッドを確保できるかあらかじめ報告しており、非常電源を使用できる病院もネット上で公開されるようになった。
ただ、相川教授は「水も電気もない震災時の医療は相当大変」と話す。ネットワーク化など組織面の整備を整えても、震災時に患者が直面する問題を全て解消することはやはり難しい。
実際、被災地での透析治療は現在さまざまな困難に直面している。
相川教授によると、現在、仙台地区で透析治療をしている病院では平常時の患者以外にも、避難所などからの患者受け入れが発生。ベッド不足に陥り、通常4時間かけて行う透析を2時間半や3時間に短縮して対応しているという。
通常4時間で体内から引く水分を3時間で引かなければならないと、血圧が急に低下したり、頭痛や吐き気などの不均衡症候群が起こりやすくなる。尿毒素が身体にたまるという悪影響もある。さらには心不全や、肺水腫にもつながる。カリウムの数値も高くなり、不整脈、場合によっては死につながることもあるという。