「認知症の親」から円滑に相続する"1つの方法" "もしも"に備えられる「家族信託」のすすめ

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事前対策である「家族信託」をするか? しないとした場合、認知症になってしまった後に、成年後見制度を利用するか、そのメリット・デメリットを比較してみましょう。

家族信託のメリット
図表:『 「認知症で親の財産凍結」子の"相続地獄"避ける策』より

成年後見制度の他に「任意後見」の選択があります。しかし、結局は「法定後見」のように縛られ、費用も同等程度にかかるので、これもお勧めできません。なので、認知症になる前に「家族信託」をする方が有益です。何もせずに認知症になってしまうと、財産凍結されて、相続対策もできず、加えて10年間としても700万円程度かかってしまうのです。しかも、その分だけ、相続財産も減ってしまうのです。

それでも、「家族信託」をしていない方がいまだに多いのは、①「家族信託」自体が、専門家も含めて、まだあまり知られていない。②認知症になって財産凍結になることも知らない。③何とかなると思っている……などがあげられます。

③については①②を知らないことも影響しています。特に②については、世の中がコンプライアンス(法令遵守)という“手続き”にうるさくなっていることへの認識が薄く、「それは大企業の話でしょ」に留まっているのです。そうです、銀行は大企業ですよね。

財産の少ない家庭ほどモメている

また、「何とかなる」というなかで、多くの親が言う台詞が「うちは仲がよいから」とか「そんなに財産がないから」です。しかし、それは幻想にしか過ぎません。

“仲がよい”のは、親がまだ生きていて、財産の分配が始まっていないからに過ぎません。亡くなってからは、昔のような家督相続で長男が全部を相続、とはならない世の中です。子どもはそれぞれ生活があって、ローンの返済・教育費の負担を背負って精一杯です。「もらえるものなら欲しい」と思っています。子どもの配偶者も黙ってはいないものです。それがご時世なのです。

“そんなに財産がないから”、これもよく聞く台詞ですが、多くのケースでは「そんなに」は謙遜にしか過ぎません。

申告のお手伝いをして徐々に財産が明らかになってくるにつれて、人は、こんなに財産があっても、「そんなに財産がない」と思い、あるいは感じているんだなぁと痛感します。持ち家率8割ですから、それだけで都内なら一財産となり得ます。

百歩譲って、財産が本当に少ないとしても、少ないからこそ、それをめぐってもめやすいのです。司法統計によれば、家庭裁判所の相続紛争の7割が、相続税すらかからない5000万円以下なのです。

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