アメリカの大学では、このオーマンのようにチャットボットGPTに対応した授業の見直しが始まっており、教育と学習に巨大な変化をもたらす可能性がある。中には、授業内容を全面的に見直し、口頭試験やグループワーク、タイプではなく手書きの小論文の評価を増やすといった変更を加える教授もいる。
これらは、「ジェネラティブAI(生成AI)」と呼ばれる新技術の波に対してリアルタイムで進行している対策の一部だ。人工知能研究所「OpenAI(オープンAI)」が昨年11月に発表したチャットGPTは、そうした変化の最前線にいる。
このチャットボットは、短いプロンプトに反応して、不気味なほど明快で、ニュアンスを汲み取った文章を生成する。人々はこれをラブレターや詩、ファン・フィクション(2次創作)、さらには学校の課題を行うのに使っている。
そのため一部の中学校や高校では、生徒がチャットボットに課題をやらせていないかどうかを見極めようと躍起になっている。ニューヨーク市やワシントン州シアトル市などの公立学校の中には、不正行為を防止するため、学校のWi-Fiやデバイスでのチャットボット使用を禁止したところもある。それでも、生徒たちはチャットGPTにアクセスする回避策を簡単に見つけ出してしまう。
技術進化で今後さらなる対応が必要に
大学などの高等教育機関は、AIツールの使用禁止には消極的だ。理由としては、禁止の効果が疑わしいことに加え、学問の自由を侵害したくないという考えがある。つまり、AIの使用を禁止するのではなく、教え方を変化させる形で対応しようとしているわけだ。
「特定の不正行為にターゲットを絞るのではなく、教員の授業運営の権限を確実にバックアップする基本方針を確立しようとしている」。フロリダ大学のプロボスト(統括理事)、ジョー・グローバーは、「私たちが対処しなければならない技術革新は、これが最後ではない」と語る。
生成系AIはまだ黎明期にあるため、さらなる技術革新は必至だ。オープンAIは、これまでのバージョン以上にテキスト生成能力に優れた「GPT-4」を間もなくリリースする予定である。
グーグルはライバルのチャットボット「LaMDA(ラムダ)」を構築し、マイクロソフトはオープンAIに対し100億ドルの出資を検討している。「Stability AI」や「Character.AI」といったシリコンバレーのスタートアップ企業も、生成系AIツールの開発に取り組んでいる。