理研でも、研究不正の再発防止、研究倫理の徹底など後ろ向きの改革に加えて、国際的なプレゼンスの向上や社会的課題解決に科学の立場から取り組むことが期待されている。5人の理事は、昨年10月からコンプライアンス担当を務めている有信睦弘氏(元東芝常務研究開発センター所長)を除き、4人が交代した。
具体的な成果を出すことで信頼回復
これからの理研のミッションとしては以下の3点を挙げた。第一に優れた研究成果を出し続けること。基盤研究から枝葉を伸ばし、今までなかった新しい科学技術を創成する。第二にそのなかで、科学技術にかかわる人材育成も図る。特に理研は有期雇用の研究者を多く抱えており、大学や他の研究機関、産業界などに送り出す人材を育成するキャリアパスとしての役割を果たす。第三に基礎研究と応用研究の橋渡しをすることを通じて産業界と連携し、社会全体にアウトカムを出すこと。
そして、個々の研究センターがそれぞれの成果をあげていく中で、全体として「理研知」を発信し、そのなかで、STAP問題によって失われてしまった科学全体への信頼を取り戻す、と説明した。
具体的な施策については、着任したばかりでもあり、決まっていない。まずは、4~5月の間に各研究センターを回って現場を見、実際に若手を含めた研究者と話をする中で、方針を固めていくという。
ただ、とくにSTAP問題の舞台となった旧CDB(現在は多細胞システム形成研究センター)を中心とした若手研究者の自信喪失を懸念し、「世界中で競争している中でも、自信を持って孜孜忽忽(ししこつこつ)と研究を進めていけるような環境に整えたい」と語った。
「行き過ぎた成果主義」という批判については、「研究者の自由を確保することは当然だが、一方で、世界に通用する研究をやりたいと言う気持ちは研究者であれば誰でも持っているものであり、このモチベーションを「理研知」「社会知」につなげていくことが重要」だと回答した。
「研究者の高い倫理感に基づく研究への指向性を高め、その成果を持って社会に対して影響を与えるという意志を理研の研究者に持ってほしい」という。この思いを現場に届け、研究効率の最大化、科学を通じた豊かな国民生活と国際社会の形成への貢献をどのように具体化していくのか。
「野依イニシアチブ」と呼ばれるほど、良くも悪くも強力に理研を率いてきたとされる野依理事長のあとをどのように引き継いでいくのか。松本新理事長の手腕が試される。
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