JR西「大雪で車内閉じ込め」、なぜ防げなかったか 計画運休の判断は?危機回避できた4つの節目

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長谷川社長が分岐器不具合の第1報を受けたのは、大阪駅近くの本社内でほかの役員と打ち合わせをしていたときだった。「早く復旧させてほしい。作業に専念してください」と現場に伝えた。

同社では長時間の列車内閉じ込めを防ぐため、列車が停車して1時間経過したら乗客を降車させることにしている。これに従えば、遅くても21時には乗客を降ろす決断をしなくてはいけない。しかし、日が暮れた暗闇の中、雪が降りしきり、場所によっては路面が凍結している可能性もある。

乗客を降ろした結果、転倒などの2次災害を起こすわけにはいかない。車内に閉じ込められた乗客と向き合う乗務員が「乗客を降ろしたい」と要望しても、「安全の確保こそ最大の使命」――。一方で、作業員たちが現場で分岐器の除雪や解凍に取り組んでいる。さまざまな部署の意見を勘案したうえで、現場を指揮する三津野隆宏・近畿統括本部長は分岐器の不具合が解消するまで列車内で待機するという判断を下した。

バーナーでも溶けない雪

しかし、作業は難航した。気温が低く雪が凍ってしまい、バーナーを使ってもなかなか溶けないのだ。分岐器の不具合が直って列車が動き、最寄り駅のホームで乗客を降ろすことができたのは、山科―高槻間で駅間停車した15本のうち13本だった。23時頃から翌日1時頃にかけて駅間停車が解消。これらの列車の駅間停車時間は短い列車で1時間42分、長い列車で5時間22分だった。

一方で、分岐器不具合を解できず、乗客の降車を決断せざるをえない列車もあった。19時40分に山科―京都間に停車した特急サンダーバードと普通列車の2本である。とくに普通列車にはおよそ1400人が乗車していた。長時間にわたって乗客に車内で待機してもらうと逆に車内で安全上の問題が起きかねない。23時すぎ、三津野本部長は乗客の降車を決断した。

帰宅していた長谷川社長の元にこの情報も届けられた。長谷川社長もかつて近畿統括本部長として現場の指揮を取っていた経験があるだけに、三津野氏の苦渋の決断は痛いほどよくわかる。長谷川社長は「現場の判断を尊重する」と決めた。

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