「減税」訴える自工会が13年重課に沈黙の不可解 ユーザーの利益を守るべき立場ではないのか?

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半導体などの不足により、新車の納期も長引いている。以前は1~2カ月で納車されたのに、今は納期が6カ月から1年以上に達する車種も増えた。

そうなれば新車が納車されるまでは、今まで使ってきた古いクルマの車検を取り直して乗り続けるしかない。この状況でも、新規登録から13年を超えると、自動車税、軽自動車税、自動車重量税は増税されてしまう。

不可解なのは自工会(一般社団法人・日本自動車工業会)の対応だ。自工会は以前から「日本の自動車関連の税金は、複雑で税額も高すぎる。税金の内容をシンプルにして、ほかの国のユーザーと同等に負担を減らすべきだ」と提唱してきた。

自工会会長の豊田章男氏はユーザーに寄り添う発言も多いが…(写真:トヨタ自動車)

ところが、クルマのユーザーをもっとも苦しませている新規登録から13年を超えた車両の増税については、私の知る限り何も提言していない。

そこで自工会に問い合わせると「税金についての提言は行っているが、重課(増税)に関する個別の提言はしていない」(広報室)という。

税金の提言は総括的に行い、細かな言及はしないとも受け取られるが、自工会の提言は決して大雑把なものではない。自動車関連の税金に関する各種の情報やデータを細かく分析して、具体的かつ詳細な提言をわかりやすく行っている。

それなのに、新規登録から13年を超えた車両の増税に黙っているのは不自然だ。

前述の通り、今はガソリンを筆頭にさまざまな物価が高騰して、なおかつ所得が大幅に減ったユーザーも多い。新車の入手も困難だ。新規登録から13年を超えた増税の撤廃は、自動車ユーザーにとって緊急の課題になっている。

自工会はユーザーの味方であれ!

今の状態を放置するならば、自工会の“税金を下げる提言”も解釈が違ってくる。税金を下げる目的が、ユーザーの利益を守ることではなく、クルマをたくさん売ることに置かれると考えられるからだ。

つまり、古いクルマのユーザーが増税に耐えかねて新車を買えば、自動車業界の利益に繋がる。苦しみながらも増税に耐えれば、国の税収が潤う。

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自工会と国は、一見すると税金を巡って対峙しているように思えるが、実際にはアンダーテーブルで手を握り合っている。このように見られても仕方ない。

クルマ好きの1人としては、自動車業界と国が癒着して、困っている人達から多額の税金を巻き上げているとは思いたくない。前述のとおり新規登録から13年を超えた車両の増税は、どのように考えても悪法だから、即座に撤廃すべきだ。自工会もユーザーの味方であるなら、増税に反対する趣旨の提言をせねばならない。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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