実際の入試問題を使って「探究を進めるための型」を教える東大生の深い授業 思考力は教わらないと身に付けるのは難しい

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1月に3回目となる「大学入学共通テスト」が行われた。「知識があれば解ける」問題から「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増えているが、東大では昔から知識よりも思考力を問う問題が出題されていたという。そんな入試問題を活用しながら、東大生作家の西岡壱誠さんは中高生向けに探究学習を進めるための「型」を教えている。「頭の使い方」を鍛えることで共通テストの問題も解けるようになるという、その授業の中身とは。西岡さんに解説してもらった。

探究に必要な「頭の使い方」を教える東大生の授業とは

僕たちは今、「アカデミックマインド養成講座」という事業を全国4校で行っています。これは、東大生講師たちが、中学生や高校生たちに「勉強」ではなく「頭の使い方」や「『なぜ?』と問う勉強の仕方」を伝えるというものです。英語や国語といった教科を教えるのではなく、一緒に「探究」を行うお手伝いをしています。

確かに題材は、理科や社会、英語、国語、数学を使っています。でも、従来のものとは大きく異なった「問い」を出しています。例えば、こんな問いです。

「なぜ、朝焼けがきれいだと明日は雨になりやすいのか?」
「江戸時代から明治時代で、日本の平均身長が10cmも伸びたのはなぜか?」
「なぜ青信号は緑色なのか?」

このように「身の回りにあふれる問い」と、机の上の勉強とを結び付けるような問いの仕方をしています。そして、答えをただ教えることはしません。ワークシートを用意し、数人のグループをつくって、友達と一緒に考えて自分たちで答えを出すことを支援しています。勉強ではなく、「問いを立てて、その問いにどう答えを出していくのか」を支援する授業なのです。

よく多くの人からこんなことを言われます。

「え? 東大生が講師をやっているのに、勉強を教えるわけじゃないの? そっちのほうが需要がありそうだけど」と。確かに、東大生といえば勉強というイメージがありますよね。

しかしこの「頭の使い方」というのは、これからの大学入試において、「知識」よりも重視される可能性のあるものであり、そして東大生たちが伝える価値のあるものなのです。

昔から東大では「思考力を問う」入試問題が出題されていた

今年も共通テストが行われました。「センター試験」から「共通テスト」に変わって、今回で3回目の入試です。

「共通テスト」は、従来実施されていたセンター試験とはかなり違うものになっています。センター試験が「知識があれば解ける問題」だったのに対して、共通テストは知識を重視するのではなく「思考力・判断力・表現力」を重視した問題が出題されています。

ただ知識を問う問題ではなく、資料を読み取ったり、その資料から考察を深めたり、きちんと頭を使わなければ解けない問題ばかりであり、多くの人が「これは、どうやって対策したらいいんだろう?」「ただ勉強して知識を暗記しても、こんな問題は解けないじゃないか」と嘆くものばかりでした。

この傾向は、今後の大学入試に色濃く反映されていくものだと考えられます。大学入試がそうだとしたら、今後の高校教育もその対策が求められるということであり、高校受験や中学校の教育にも影響していくといえるのではないでしょうか。

西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指し、オリジナルの勉強法を開発。崖っぷちの状況で開発した「思考法」「読書術」「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、2浪の末、東大合格を果たす。そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社「カルペ・ディエム」を設立。全国5つの高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計38万部のベストセラーとなっている
(撮影:尾形文繁)
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