スタンプカード「最初から押してある」納得のワケ 進捗状況は人間の「やる気」を大きく左右する

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今週1回目の運動と、今週5回目の運動を比べたとき、一度の運動が健康にとってもつインパクトは、1回目のほうが大きい。健康的な身体づくりを目指すにあたり、運動がゼロなのか1回なのかという違いは、4回なのか5回なのかという違いよりも重大だ。

年内に本を20冊読むという目標を設定したなら、読書で教養を高めるにあたって、読んだ本がゼロか1冊かの違いは、19冊か20冊かの違いよりも重大だ。今年は1冊も本を読んでいない人と、1冊読んだ人がいたら、後者のほうが明らかに読書量が多いと判断するだろうし、その判断は間違っていない。

ところが19冊読んだ人と、20冊読んだ人がいたら、読書量の差はきわめて少ないとみなす(ただし、目標に1冊足りないという点では失望するだろう)。目標が20冊だったのに、30冊読んだとしたら、多すぎてよくなかったとすら感じるかもしれない。

進捗がモチベーションを高めないことも

蓄積型目標を掲げているなら、指標の数字にほんのわずか届かなかったとしても、目標を目指したことによる恩恵の大半はすでに回収している。この場合、進捗によってモチベーションが高まることは必ずしも期待できない。

たとえば、大学に行くことを「単位を得る」というオール・オア・ナッシング型目標の行動とは考えず、「教養を高める」という蓄積型目標で考えているのだとしたら、卒業のために必要な最後の講義は、自分の知的成長に対するインパクトがもっとも小さい。最後の講義は飛ばしてもかまわないとすら思うかもしれない。

実は、蓄積型目標であっても進捗がモチベーションを高める場合も多いのだが、それは理由が違うのだ。

(翻訳:上原裕美子)

アイエレット・フィッシュバック 心理学者/シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授

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Ayelet Fishbach

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの受賞歴のある心理学者で、モチベーションサイエンス学会の元会長。100以上の科学論文を多くの心理学やビジネスの学会誌に発表している。人間のモチベーションについての革新的な研究により、実験社会心理学会の最高論文賞や、キャリア・トラジェクトリー・アワード、フルブライト教育基金賞などを受賞。フィッシュバック博士の科学的な発見は、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』、CNN、NPRなどのメディアで頻繁に取り上げられている。

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