スタンプカード「最初から押してある」納得のワケ 進捗状況は人間の「やる気」を大きく左右する

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厳密に言えば、2枚のカードはまったく同じ報酬プログラムだ。どちらの客も、無料のコーヒーを受け取るために、カフェでコーヒーを新たに10杯買う(スタンプを10個集める)必要がある。

ところが、ボーナスポイントの魅力が実に大きかった。有利なスタートを切ったと感じた客は、そうでない客よりも頻繁にカフェに足を運び、より短期間でスタンプを貯めていったのである。

12個のマス目のうち、2個がすでに埋まっていると、貯め始める前から「もう16%到達した」と感じる。報酬に近づいているという幻の実感があるので、ゴールを目指す動機が強くなったというわけだ。

オール・オア・ナッシング型か蓄積型か

ここまでに挙げた例には1つ共通点がある。目標が「オール・オア・ナッシング型」なのだ。ポイントカードの最後のマス目までスタンプを貯める場合でも、単位を取り終えて大学を卒業する場合でも、うちの愛犬が1日外出していた飼い主と再会する場合でも、ゴールまで完全に走り切って初めて褒美が手に入る。

週に5日働くとか、年間20冊の本を読むといった、「蓄積型」の目標とは種類が異なる。オール・オア・ナッシング型の目標の場合、恩恵を得るためには、目標の完全到達が必須条件だ。

スタンプをほとんど満杯まで集めたとしても、1個でも足りなければ報酬はゼロ。学業でも、必要な単位をすべて取得しなければ、学位を得られない。

だが、目標までの距離が縮まるにつれ、残りの努力の見返りは大きくなる。このため、オール・オア・ナッシング型の目標は、進めば進むほどパワフルに動機づけの力を発揮する。

それとは対照的に、蓄積型の目標の場合は、目標に向かって進む道中で恩恵を少しずつ集めていく。健康のために運動をするなら、毎回の運動を重ねるごとに、少しずつ健康的な身体を手に入れていく。

読書家になりたいという理由で、今年は20冊の本を読もうと決めたのなら、その1冊1冊の読破が小目標の達成だ。蓄積型目標の恩恵はどんどん溜まっていくものなので、「限界価値」――増加する価値のこと。1回の活動(本を1冊読む、運動を1回する)がもたらす利益――は基本的には小さくなる。経済学者はこれを「限界効用逓減」と呼ぶ。

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