
今回登場するのは公立中学校教員の柴崎梓さん。急増する不登校や発達障害の生徒に、適切な対応を取れない学校現場の現状を憂う。障壁となっていたのは、「削るべきでない部分を削る」国の予算配分だった――。
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年齢:40代
居住地:関東
勤務先:中学校
「国のお墨付き」で一斉休校したら不登校が増えた
2021年度、全国の中学校で不登校だった生徒は16万3442人。9年連続で増加の一途をたどるが、とくに20年度からの増加率は23.1%と過去最高だ。公立中学校で教員を務める柴崎梓さんは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響をまざまざと感じている。

(写真:AH86/iStock/Getty Images Plus)
「臨時休校をきっかけに、学校を休むことへの抵抗感が薄れたのでしょう。余裕のある家庭では、親が勉強を見たり塾に行ったりと学びを継続できましたが、そうでない子は家で一日中ゲームざんまい。生活リズムが崩れてそのまま不登校になった子もいます」
Withコロナの学びに対応しようと、小中学校の児童生徒に1人1台端末を整備するGIGAスクール構想も加速したが、そもそも不登校の生徒には端末の使い方すら十分に伝えられていないという。
「授業をオンライン配信したり、個別にメールを送ったりしても『なしのつぶて』なんです。インターネット環境がないなら学校で機器を貸せるのですが、その情報も届いていないのでしょう。何より、機器を手にしても設定方法がわからないはずです。誰かが直接会って教える必要があるのに、今はプライバシーの問題や『無理に追い詰めるな』という学校の方針もあって昔のように家庭訪問もできません。これ以上こちらからは踏み込めない一方で、子どもからすれば学校から声がかからず見捨てられたと感じているかもしれません」
続けて柴崎さんは、「コロナ禍で学校での楽しみが奪われた」ことも不登校を後押ししたと話す。文部科学省の調査によれば、不登校の主な要因で最多なのは「無気力・不安」で、不登校生徒の約5割が該当する。たとえ勉強は嫌いでも、行事や部活動、給食や休み時間を楽しみに通学していた生徒もいる。授業以外でリーダーシップを発揮したり、ムードメーカーとして活躍していた子どもの目に、今の学校はどう映るのだろう。「なぜ大人には『Go Toトラベル』や『Go To Eat』があるのに、子どもは修学旅行に行けず、お昼も黙食なのでしょう。子どものエネルギーはとてつもなく大きいです。それを発散させなければ自然と寝るのも遅くなり、生活リズムが乱れて新たな不登校を生んでしまいます」