【産業天気図・医薬品】市場は頭打ち。大型創薬に向け各社R&D強化

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縮小

●お天気概況
国内市場は、ここ数年頭打ち状態が続く。医療用医薬品(医者の処方箋が必要)には医療費抑制が重くのしかかる。2004年4月には薬価が平均で4.2%引き下げられた。今年は薬価改定がないが、年後半からは次回の改定を見越した買い控えも起きそう。一般用医薬品(大衆薬)は値崩れに加え、サプリメントや特定保健用食品といったライバルの勢力拡大も頭が痛いところだ。とはいえ他業種に比べて高利益率、収益を十分に出している点では『晴れ』と言えなくもないが。
 大手では、武田薬品工業は高血圧薬ブロプレスや糖尿病薬アクトスが好調のほか、抗潰瘍薬タケプロンと前立腺ガン薬リュープリンも米国で持ち直すなど業績好調。アステラス製薬も収益を拡大させる。高脂血症薬リピトール、降圧剤ミカルディスが国内で好調のほか、欧米でも泌尿器用薬ベシケアなどが成長する。塩野義製薬は非医薬のリストラ効果が一服だが、期待の高脂血症薬クレストール次第。三共は主柱メバロチンの特許切れに絡む収益縮小が続き、降圧剤オルメサルタンの成長でもカバーできない。キリンビールからの導入薬エスポー、グランの販売終了や非医薬会社の営業譲渡も響く。大衆薬最大手の大正製薬は主力品のリポビタンDなどドリンク剤の減少に歯止めがかからない。

●今後の注目点
グローバル・メガファーマと互していくには大型新薬の開発が不可欠だ。今期の大手各社は過去最高レベルの研究開発投資を実施する。また、国内が頭打ちということで、欧米でのビジネス拡大も必要。それも従来のようにサードパーティに販売を委託するのではなく、自前での販売網を敷き、収益を最大化しなくてはならない。山之内製薬と藤沢薬品工業の合併、三共と第一製薬の経営統合(こちらは村上ファンドからの反対に遭うなど株主総会まで多難だが)といった業界再編は、すべてこの研究開発費捻出と海外本格展開を狙ったものだ。今後も再編第2幕に要注目だ。
【高橋由里記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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