日本とドイツ「スポーツの位置付け」こんなに違う 日本の「部活の地域移行」に欠けている視点

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実際、誰もが日常的にスポーツができる環境作りは、個人にとっても、社会にとっても有益でなかろうか。スポーツは仕事や学業以外の時間に楽しんだり、仲間と試合をしたり、自分に挑戦したりすることを可能にする。また、試合に出ずとも仲間とトレーニングそのものを楽しむ機会が増えることは、人々の生活の質を高めることにつながる。

企業にとっても、社員が日常的にスポーツにいそしむメリットは少なくない。多くの社員が健康な状態で、しかも職場以外の価値観に触れる機会が多いと、視野も広がり仕事の質が創造的になる可能性がある。

地域社会にとっても有益だ。学校、職場、年齢もバラバラでありながら、スポーツを通してできるコミュニティは、地域内の「つながりのホットスポット」になり、ひいては地域社会を元気にするための「酵母」のような役割をはたすのではないか。

スポーツはまた、他者との精神的な距離を縮めやすいため、外国にルーツを持つ人や、ハンディキャップを持つ人たちも参加すると「誰も排除しない社会」の感覚が進むことも期待される。

また、指導や審判をはじめ、試合の運営ボランティア、日常的なトレーニングやスポーツ仲間とのパーティなどのアレンジ係、こういったことに趣味としてかかわるのもよい。つまりスポーツはボランティア活動の間口として広い。

社会全体におけるスポーツという議論が必要

こういう広範な社会的役割をスポーツクラブで実現しているのがドイツだ。では日本でもスポーツクラブを増やせばいいではないか、と考える向きもあるかもしれない。しかし、まず数が違う。ドイツには約9万のスポーツクラブがあるが、日本は3500程度だ。さらにクラブに関する歴史や社会背景もかなり異なる。

日本でも草野球からフットサル、ジョギングなど、「遊び」「気晴らし」「健康」を目的に、気の合う仲間や個人で楽しむ人たちも多く、これらの趣味的なスポーツはドイツで行われているものに近い。しかし、日本ではコミュニティの課題やスポーツ政策、社会政策などと積極的に関連付けられることはない。

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