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日本の国家路線転換を機に「広義の国防」を考える 国防は防衛費増額や軍事増強だけではない

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国民を欺きながら推し進めた防衛力拡張。1930年代に起きた「国防」をめぐる論争を思い起こす。

艦上から艦艇を観閲する岸田文雄首相
国際観艦式で海上自衛隊の護衛艦「いずも」艦上から艦艇を観閲する岸田文雄首相(2022年11月6日)(写真:時事)

2022年末の予算編成、税制改正を経て、岸田文雄内閣は、安全保障3文書の改定を閣議決定した。この決定は、国際社会における日本の国家路線の転換を意味する。23年最初の政治課題は、岸田政権の進める新たな安全保障政策の妥当性を掘り下げて議論することである。

最も基本的な問いは、安全保障政策の転換の根拠として第2次安倍晋三政権以来の政権が用いる「安全保障環境の悪化」という決まり文句が何を意味するかというものである。中国の軍事的・政治的大国化、北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かに日本の安全にとってのリスクだ。しかし岸田政権が進める防衛力の大幅な拡張、攻撃能力の保有がそれらへの的確な対策かどうかは熟考が必要だ。

北朝鮮の核能力は、基本的に米国に対抗する目的のものであり、日本が単独で攻撃力を準備することには意味がない。中国との間の武力紛争が想定されるのは、いわゆる台湾有事に米国が介入した場合であろう。

台湾問題の核心は、自由民主主義に基づく台湾の自治を保持することだ。22年11月の台湾の統一地方選挙では、野党国民党が勝利した。国政選挙と地方選挙で意思表示を使い分ける台湾の人々は、あえて曖昧戦略を取っていると思われる。台湾の人々の現状維持への思いを無視して、有事の際には日本も米軍とともに台湾防衛に立ち上がるなどと肩を怒らせることは、台湾の自治にも日本の防衛にも無関係な独り善がりだ。

次ページ大幅に増加する防衛費の財源問題
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