子どもが「学ぶ楽しさ、自分の成長を実感できる探究学習」のやり方と真の狙い 興味関心、コンピテンシーから始まる探究学習

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ただし、何でも好きなことをやっていればよい、という時間ではありません。それでは自由時間や遊びと同じになってしまい、プロジェクトとして成立しないケースも多いからです。そこで、子どもたちにはマイプロジェクトの条件として、3つ提示しています。「自分の向上や成長が感じられるものを選ぶこと」「めあて(作戦)を事前に立てること」「事後に振り返りを書くこと」の3要素です。1つずつ詳しく解説していきます。

1つ目は「自分の向上や成長が感じられるものを選ぶこと」です。自分が何をプロジェクトとして探究していくかを決める際、ヒロックの子どもたちも基本的には自分の好きなものや興味のあることから選んでいます。実際に選んだコンテンツには料理やお菓子作り、工作、本作り、実験、プログラミング、カードゲーム、絵を描くなどさまざまなものがありました。

ただし、これらを選ぶ条件として「自分の向上や成長が感じられるかどうか」という観点を、つねに確認するようにしています。子どもたちの中には、もともと「向上したい!」と思っている子もいれば、「ただやりたいだけ!」という子もいます。

好きなことをやるのも悪くはないけれど、せっかくのマイプロジェクトです。向上や成長に無理やりでも結び付けることで、まとまった時間も有効活用できるし、必要な道具を予算で買ったり使ったりすることも可能になります。日頃好きでやっていることでも、向上を意識することで新たな視点が生まれるし、成長すればより好きになりますよね。まさに学ぶ喜び、成長実感を体感できる探究学習となるわけです。

ヒロックでは自分が好きなものや興味のあることから、探究のテーマを選ぶ。実際に選んだコンテンツには料理やお菓子作り、工作、本作り、実験、プログラミング、カードゲーム、絵を描くなどさまざまなものがある

2つ目の「めあて(作戦)を事前に立てること」では、子どもたちに問いを立てる力や見通しを持つ力、仮説を立てる力などの向上を期待します。めあてを立てず、なんとなく始めてしまうと、コンテンツが刹那的に移り変わってしまったり、終わってみて「何をやったかよくわからない」という状態になってしまいがちです。この時間にどんな「初めて」を試したいのか、現時点でどのような予想や仮説が立てられるのか、終わった後にどのような姿になっていたいのか。事前に構えをつくることによって、より深い学びや探究が可能となります。

3つ目の「事後に振り返りを書くこと」では、学びのプロセスを内省することで、学び方を獲得したり、自分の個性や長所、強みについて知ったりすることを期待します。ただやりっ放しで終わってしまっては、「いつの間にか上手になったけど、どうやって上手になったのかわからない」という状態になってしまい、ほかのことに生かしにくくなってしまいますよね。

入学当初、ヒロックの子どもたちに、今現在上手にできることは、どうやって上手になったのかを聞いたことがあります。子どもたちは「最初から上手だった」とか「たくさん練習したから」というような反応がありました。間違いというわけではありませんが、それだけだと「今苦手なことは上手になれない」とか「歯を食いしばって、時間をかけて練習しないと上手になれない」ということにもなってしまいますよね。向上や成長には人それぞれのコツがあるはずだし、自分にとってのコツを知っておくことは、これから先の未来を幸せに生き抜くうえで大きな財産となるでしょう。

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