東洋経済が厳選、「これだけは読んでおくべき」教育関係者にお薦めしたい10冊 2022年がわかる、23年に備える教育トレンド
その理由は、脳の「報酬系回路」にあるというが、人は「叱りたい」欲求とどう向き合えばいいのか? 臨床心理士である著者の村中直人氏がまとめた一冊だ。
つい叱ってしまう、その後に自己嫌悪に陥りながらもまた叱ってしまう。どうすれば叱らずに済むのかと悩む。そんな経験がある人は多いに違いない。『〈叱る依存〉がとまらない』(著:村中直人/紀伊國屋書店)では、「叱る」を科学しながら、叱る依存に陥らないための方法を詳しく解説してくれている。
不親切教師のススメ(著:松尾英明)
「学校には度が過ぎて『親切すぎる』『丁寧すぎる』対応や習慣が多い。これこそが子どもたちの主体性を奪っている」。こう指摘するのは『不親切教師のススメ』(著:松尾英明/さくら社)の著者で千葉県公立小学校教員の松尾英明氏だ。
教室の後方に張られた習字の掲示、廊下に張られた先生お手製の掲示物、ロッカーに貼られた名前シールなど、どれも学校では当たり前の光景だが、こうした親切な振る舞いが先生はもとより子どもも、保護者も苦しめているという。
本書では、そもそも教師はなぜやたらと親切になってしまうのか、原因を探りながら、教師があえて“不親切”になることで子どもたちの主体性を伸ばすことができる理由を解説している。当たり前だと思っていた学校の常識、自分の日頃の仕事を改めて振り返るきっかけを与えてくれる一冊だ。
子どもたちに民主主義を教えよう(著:工藤勇一、苫野一徳)
学校の当たり前を見直そうという動きは、全国で加速している。宿題や定期テスト、固定担任制、そして今年とくに話題になったといえば校則ではないだろうか。
『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(著:工藤勇一、苫野一徳/あさま社)は、元麹町中学校の校長・工藤勇一氏と教育の本質を問い続けてきた哲学者・苫野一徳氏の共著。いじめや理不尽な校則、不登校、体罰、心の教育、多数者の専制、学級王国など、今学校が抱える問題を分析しながら何ができるか、どこから変えていけるか、哲学と実践をつなぐ興味深い一冊になっている。
キーワードとなっているのは対話の力、そして民主主義教育だ。学校教育において合意形成に至るプロセスを経験させることが、日本社会のアップデートにもつながるという。
ジェネレーター 学びと活動の生成(著:市川力、井庭崇)
2020年度に小学校、21年度に中学校、22年度に高校でスタートした新学習指導要領。知識・技能だけでなく思考力・判断力・表現力、さらには学んだことをどう生かすのかという学びに向かう姿勢を育むことを目指している。そこで注目されているのが探究学習だ。