記事の目次
1. 『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(著:島村華子)
2. 『超一流になるのは才能か努力か?』(著:アンダース・エリクソンら)
3. 『未来のイノベーターはどう育つのか』(著:トニー・ワグナー)
4. 『センス・オブ・ワンダー』(著:レイチェル・L. カーソン)
5. 『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(著:仲村和代、藤田さつき)
6. 『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(著:アンドリュー・O・スミス)
7. 『学校のデジタル化は何のため?』(著:為田裕行)
8. 『世界トップティーチャーが教える子どもの未来が変わる英語の教科書』(著:正頭英和)
9.『 チ。ー地球の運動についてー』(作・画:魚 豊)
10. 『もう「反抗期」で悩まない!』(著:沼田晶弘)
11. 『どこでも誰とでも働ける』(著:尾原和啓)

1. 『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(著:島村華子)

大川 翔(おおかわ・しょう)
ブリティッシュコロンビア大学 大学院生
(写真:大川さん提供)

「わが子を天才に育てたい」。親ならば、誰もが一度はそう考えたことがあるのではないだろうか。天才はどう育つのか?どんな教育を受けてきたらそうなるのか、興味は尽きない。

現在、カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)の大学院で博士号を取得すべく研究を続けている大学院生、大川翔さんは誰もが認める天才だ。9歳でカナダ政府にギフテッドと認定され、14歳でカナダの高校を卒業し大学にも合格、18歳で学士号、21歳で修士号を取得して、現在22歳である。

幼少期について尋ねると「ごく普通の子どもだったと思います」と話す大川さんだが、とにかく本はたくさん読んだという。そんな大川さんが選んだのは、『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(著:島村華子/ディスカヴァー・トゥエンティワン) だ。大川氏は、推薦理由についてこう話す。

モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方 3歳 〜 12歳 の子ども対象
『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「児童発達学の専門家である著者が理論とデータに基づき無条件子育ての重要性を語る、具体例豊富な本。『おざなりほめ』や『人中心ほめ』ではなく『プロセスほめ』。具体的にほめ、自由回答式の質問をする。『ダメ!』『違う!』はできるだけ使わない。まさに僕がカナダで受けてきた教育です。3歳から12歳の子どもを対象にしたほめ方・叱り方の本ですが、『わたしメッセージ』や『アクティブリスニング』という手法は応用が利くと思います」

著者は、オルタナティブ教育として知られるモンテッソーリと、近年再注目されているレッジョ・エミリア教育の研究者、島村華子氏だ。「ほめる」「叱る」の声かけ次第で、親子関係や子どもの育ち方に大きな影響が見られるという。エビデンスに基づく最先端の教育メソッドを、具体的な声かけの仕方に落とし込んでおり、子どもを持つ親ならば一度は読んでおきたい1冊である。

2. 『超一流になるのは才能か努力か?』(著:アンダース・エリクソンら)

趙 慶祐(ちょう・けいゆう)
Mined COO
(写真:Mined提供)

一方で、さまざまな分野で活躍する方の中には「努力で一流に上り詰めた」と話す人も多い。才能か、努力かは、永遠の問いと言ってもいいだろう。

オンラインでライブ授業を配信するプラットフォーム「スコラボ」を展開するスタートアップ企業Mined(マインド)のCOO趙慶祐氏が選んだ本は、この永遠の問いに挑んだものだ。『超一流になるのは才能か努力か?』(著:アンダース・エリクソン、ロバート・プール/文藝春秋)である。

本書にはアスリートから音楽家、さらにはビジネスパーソンまで、世界中のトッププレーヤーたちを科学的に研究し、導き出された「超一流」の鉄則がまとめられている。趙氏は、この本を選んだ理由をこう説明する。

超一流になるのは才能か努力か?
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「世の中にはさまざまな学習や才能開発法を説いている本がありますが、その中の多くは著者の経験談にとどまっています。本書は、それぞれの分野の具体的な事例を基に、『卓越した人物』になる方法を分析しています。何世紀も議論されていたテーマである『才能VS努力』に明確な答えとエビデンスを提示し、『才能ではなく努力が重要』なのに『努力は必ずしも報われない』のはなぜなのかを解決してくれることで、さまざまな興味とゴールに対して迷いなく正対することができます」

著者の1人、アンダース・エリクソン氏は「なぜ、『超一流』になれる人となれない人がいるのか?」という疑問から30年以上にわたって「超一流」を研究してきた第一人者だ。世界中の論文や書籍への引用も多いという本書だが、努力の仕方には「正しい努力」と「正しくない努力」があるという。子育てはもちろん、親自身の成長にも生きる本といえそうだ。

3. 『未来のイノベーターはどう育つのか』(著:トニー・ワグナー)

前田智大(まえだ・ともひろ)
Mined 代表取締役
(写真:Mined提供)

趙氏には、共同創業者がいる。前田智大氏で、Minedでは代表取締役を務める。2人はともに、名門の灘高等学校出身で、趙氏は東京大学、前田氏はマサチューセッツ工科大学で学んだ経歴を持つ。

そんな2人が運営する「スコラボ」では、主に小・中学生を対象に、1クラス4~6人以下という少人数でオンラインライブ授業を配信している。探究学習とSTEM(科学、技術、工学、数学)教育を軸に70コマ以上(授業時間は55〜90分)の授業を開催しており、いずれも1回1000〜2000円程度の買い切りチケットで受講できるのが特徴だ。

「子どもたちには学ぶことを好きになって、主体的に学ぶ力を身に付けてほしい」と話す前田氏は、向学心を育むことで子どもの将来の可能性を広げていきたいと考える。選んだ本は『未来のイノベーターはどう育つのか ――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(著:トニー・ワグナー/ 英治出版)だ。今あらゆる分野で求められるイノベーターの資質に迫る1冊である。

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの
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「水平化する世界の中で、どのように教育を適応させていけばよいのでしょうか。インターネットの普及、新興国の発展、物流網の発達、そして機械との競争によって『同じことだけすればよい人』は『何もしなくてよい人』になりつつあります。本書は、そのような世界の潮流において、『子育てとイノベーション』という切り口から、子どもの内的モチベーション(向学心、好奇心、想像力)について実証的に示唆を与えてくれます」

本書では、エンジニアや起業家、デザイナー、社会起業家、そして彼らの両親、さらにはGoogleやアップルなど独創的な起業の人材開発担当者、MITやスタンフォードの教育者など多くの人に取材をして見えてきたイノベーションに必要な能力とは何かについてまとめている。

4. 『センス・オブ・ワンダー』(著:レイチェル・L. カーソン)

藤原さと(ふじわら・さと)
一般社団法人「こたえのない学校」代表理事
(写真:藤原氏提供)

かつては、技術力によるイノベーションによってビジネスを勝ち抜くことができる時代もあったが、変化がいっそう激しくなり簡単にイノベーションを起こすことが難しくなっている。

学校現場では、そんな変化の激しい時代を生き抜くための資質、能力を育成するために「主体的・対話的で深い学び」の実現に取り組んでいる。これまでは「正解のある問い」を勉強してきたが、実際の社会では正解があることは少なく、自ら課題を見つけて解決する能力を身に付けるためだ。そこで取り入れられたのが探究型の学習である。

2014年と早くから、「良質な探究の一般普及」を理念に、一般社団法人「こたえのない学校」を設立したのが藤原さと氏だ。探究学習をコンセプトとする教育関連プログラムの企画・運営などを行っている。そんな藤原氏が、探究学習の本質を学ぶうえでの良書として薦めるのが『センス・オブ・ワンダー』(著:レイチェル・L. カーソン/新潮社)だ。

センス・オブ・ワンダー
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「これからの社会、『考えるーThink』も大事ですが、それと同等かそれ以上に大事なのが『感じるーFeel』です。さまざまな国や多様な文化背景を持つ人たちとコミュニケーションを取りながら、今までにないものを喜びの中で創造するに当たって、論理思考だけではもはやカバーできないものがあまりにも多い。そして、その感性は自然との美しい触れ合いの中でこそ育まれるということを、科学者でもある著者が情緒豊かな文章でつづっています」

レイチェル・カーソンは、化学薬品による環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者として広く知られている。本書では、その著者が毎年夏の数カ月を過ごしたメーン州の海岸と森が描かれている。そこには、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、神秘さや不思議さに目を見張る感性をいつまでも失わないでほしいという著者の願いが込められているという。大人は何でも、つい先回りをして知識や正解を教えてしまいがちだが、子どもの好奇心や探究心を刺激して感性を育てることの大切さを教えてくれる1冊だ。

5. 『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(著:仲村和代、藤田さつき)

山藤旅聞(さんとう・りょぶん)
新渡戸文化中学校・高等学校 副校長・学校デザイナー・生物教諭、一般社団法人Think the Earth
(写真:山藤氏提供)

ここ数年、学校では教科の指導とは別に、社会の変化に応じて生じるさまざまな課題に対応する教育が行われている。SDGs教育も、その1つだ。

SDGsを授業で積極的に活用している新渡戸文化中学校・高等学校 副校長の山藤旅聞氏は、SDGsの知識を教えるというよりは、子どもたち自身の未来をつくるためにSDGsの目標が必要かどうかを考えさせることが大切だという。

そんな山藤氏が、『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(著:仲村和代、藤田さつき/光文社)を薦める理由について、こう話す。

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)
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「日本のSDGs認知度は80%を超えてきました。とてもすばらしいことです。私は教育者として学校現場でSDGsを活用した未来づくりの教育デザインを全国の皆さんと協議・実践しています。全国の教育現場で感じるのは、SDGsの理解や、SDGsにどう関わっているかを考える授業は広がりを見せていますが、本質的な解決に向けての構造を理解したり、解決に向けての具体的な行動を創造したり、その行動を広げていくためのデザインはとても弱い気がします。

本書は、毎日の生活である食べ物や着る服を切り口に、まずは地道な取材を通じて得られる1次情報を獲得する重要性や、社会課題と自分とのつながりを知り、取材によって世の中を正しく自分の力で理解していくお手本が示されています。また、すでに取り組まれている解決行動の豊富な事例や、1人の意識変容から小さな行動変容が起き、その小さな行動変容の広がりが、いずれは大きな社会変容につながるということを信じることができる内容になっています。結果的に、SDGsの本質を理解し、SDGsの解決に向けて自分に何ができるかを自問自答できるきっかけを与えてくれる良書です」

6. 『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(著:アンドリュー・O・スミス)

大河内 薫(おおこうち・かおる)
税理士、ArtBiz代表取締役
(写真:ArtBiz提供)

今年4月からスタートした高校の新学習指導要領では、「公共」で金融経済を、「家庭科」で資産形成を学ぶことになっている。これまで金融教育は、学校という空間になじまないとされてきた。だが、毎日の生活と切り離すことができない「お金」に関する教育を受けることは、必ずや将来生きていくための武器となるはずだ。

これまで義務教育における金融教育の必要性について啓発活動を行ってきた税理士の大河内薫氏は、「毎日使う日本語や数字は、国語や算数の授業で学ぶのに、なぜ毎日使うお金のことは学校で学ばないのか」と、かねて疑問を呈してきた。「親もお金の教育を受けていないので家庭で教えることも難しい」と話す大河内氏は、そんな保護者に向けて『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(著:アンドリュー・O・スミス/SBクリエイティブ)を薦める。金融教育先進国の米国でも、高校の授業でお金の基本を学ぶという。

アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書
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「アメリカでは高校生が学ぶというぐらいなので、お金の初学者に向けた、具体的で日常に根付いたお金の話が展開されます。最初の2章を使って『お金が自分の描きたい人生を実現する手段』であること、そして『キャリア設計とお金の基本』を話してくれることが好印象です。『投資で稼ぐ』というような一足飛びの知識ではなく、本質的な話です。また、冒頭にある、お金本の有名著者、橘玲さんの推薦文は必見であり、勇気が湧いてきます」

累計15万部のベストセラーで、貯金や株をはじめ「破産とはどんなシステムか?」「金融詐欺にだまされないためにどうすべきか?」「老後資産にはいくら必要か?」など、生涯を通じてお金とどう付き合うべきかを体系的に学べるようになっている。まさに人生に役立つ、親子で読める本といえそうだ。

7. 『学校のデジタル化は何のため?』(著:為田裕行)

品田 健(しなだ・たけし)
聖徳学園中学・高等学校学校改革本部長
(撮影:ヒダキトモコ)

金融教育に限らず、英語やプログラミング、情報など、20年に小学校から順次実施されている新学習指導要領では、さまざまな新しい教育が始まっている。

そんな中、21年にはGIGAスクール構想に伴って小・中学校に「1人1台端末」が整備された。活用の度合いは自治体間、学校間で差があるものの学びの風景をまさに一変させたといえる。

日本はPISA(国際学習到達度調査)2018で「学校におけるデジタル機器の使用状況」がOECD加盟国中最下位という結果だった。GIGAスクール構想によって、ひとまず環境は整ったわけだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で前倒しとなり一気に整備されたことから、「本当に必要なのか」「何となく不安だ」という声が保護者から聞こえてくる。

そんな保護者のために、早くからICTの活用による教育改革に注力してきた聖徳学園中学・高等学校の品田健氏は、『学校のデジタル化は何のため? 教育ICT利活用の目的9類型』(著:為田裕行/さくら社)を推薦する。

学校のデジタル化は何のため?:教育ICT利活用の目的9類型
『学校のデジタル化は何のため? 教育ICT利活用の目的9類型』(さくら社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「突然、子どもにタブレットやラップトップが渡されることになって驚いたり不安に思っている保護者の方も少なくないと思います。社会に出ればICT機器が必要なのも理解しているけれども、学校生活に本当に必要なのだろうか?と疑問に思うこともあるでしょう。そもそも何に使うのだろうか?なぜ使うのだろうか?そんな疑問に答えてくれる1冊です。持ち帰った端末をご家庭でどう扱えばいいのかを考えるヒントにもなるはずです」

そもそも「端末を授業で使うこと」は目的ではなく、あくまで手段だ。だが、本書では、一度立ち止まって「何のためにICTを授業で使うのか」という目的が明確でなければ、ICTの活用が成功しているのか、失敗しているのかわからないとし、その目的について丁寧にひもといてくれている。学校のデジタル化について、不安や懸念がある保護者はもちろん、ちゃんと理解しておきたい!という人にお薦めだ。

8. 『世界トップティーチャーが教える子どもの未来が変わる英語の教科書』(著:正頭英和)

葉一(はいち)
YouTuber
(写真:葉一氏提供)

学校教育のデジタル化しかりだが、親はこれまで自分たちが受けていた教育を、そのまま子どもたちに与えていては通用しなくなる時代になりつつある。グローバル化のさらなる進展やAI時代の到来など、子どもたちが将来生きる社会が、親の生きてきた時代とはまったく異なるからだ。

YouTubeなどの動画やアプリを使って勉強をする、といったことも過去には考えられなかったことだろう。教育系のYouTubeで圧倒的な人気を誇る葉一氏は、「とある男が授業をしてみた」で小・中・高校生を対象にした2000本以上の授業動画を配信する。すべて無料で視聴でき、この動画とともに高校受験、大学受験を目指す子どもたちも多くいる。

自習室なども主催して、子どもたちの挑戦に寄り添う葉一氏が、保護者向けにお薦めするのが『世界トップティーチャーが教える子どもの未来が変わる英語の教科書』(著:正頭英和/講談社)だ。

世界トップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書
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「『教育界のノーベル賞』ともいわれているグローバルティーチャー賞で、トップ10に入った正頭先生の著書です。タイトルだけ見ると英語学習に特化しているように感じますが、内容は家庭学習や親としてできることを考えるヒントがちりばめられています。

『自ら勉強するようになってほしい』と願う親御さんは多いかと思いますが、そのためには普段からどういった言葉を子どもにかけ、どういった経験を子どもと一緒にしていくかが大切です。そんな新しい視点との出合いがあるのがこの本です」

自分たちが生きた社会とはまったく異なる未来を生き抜く子どもを育てるために、大人たちはどう意識をアップデートすべきなのかを教えてくれる1冊だ。

9.『 チ。ー地球の運動についてー』(作・画:魚 豊)

西岡壱誠(にしおか・いっせい)
作家、現役東大生

「自ら勉強するようになってほしい」は、すべての親に共通する願いといっても過言ではないだろう。

現役東大生作家の西岡壱誠さんは、偏差値35から2浪の末、東大合格をつかんだ。その逆転合格を実現した独自の勉強法をまとめた著書は、シリーズ累計38万部のベストセラーにもなっている。意外にも西岡さんは人一倍、「この勉強、意味あるの?」と勉強から逃げ続けてきた子どもだったという。

これを読んでいる保護者の方も、「この勉強、意味あるの?」と子どもに一度は聞かれた経験がおありだろう。すべての教科、単元で明確な説明ができるかと言われれば、難しいものもあるので困ったこともあるだろうが、それでも「こんなふうに役立つよ」という話をしてきたのではないか。

チ。―地球の運動について― (1) (BIG SPIRITS COMICS)
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そんな西岡さんがお薦めするのは、『チ。ー地球の運動についてー』(作・画:魚 豊/小学館)だ。学ぶ楽しさを教えてくれる漫画だという。

「『人間が学ぶということはどういうことか』がわかる漫画です。地動説という『ばかげた空想』『異端思想』を、どうして先人たちは研究したのか?研究したいと思ってしまったのか?そしてそれに運命を翻弄され、命を懸ける人たちがいた。この漫画を読めば、その楽しさがわかるようになります!」

本書の舞台は15世紀のヨーロッパ。合理性を重んじる主人公のラファウが、異端の元学者フベルトと出会い地動説を信じるようになる。「異端思想」が火あぶりに処せられていた時代に、地動説を命懸けで研究する人たちの生きざまを描いたフィクションだ。漫画なので大人だけでなく、子どもに読ませてみるのもいいかもしれない。

10. 『もう「反抗期」で悩まない!』(著:沼田晶弘)

柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
東京大学名誉教授、北鎌倉女子学園学園長
(写真:柳沢氏提供)

小学生までは素直で、子どもの教育も順調だったけど……反抗期に入って難しくなってきたという保護者の方もおられるのではないだろうか。

何を言っても反抗的な言葉が返ってくる、何を聞いても「別に」しか返ってこない、口数が圧倒的に減って何を考えているのかわからないなど、昭和に比べると反抗期もマイルドだといわれる世代だが、どの子にもそれなりの反抗期があるものだ。

東京大学名誉教授で、北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏は、東大、米ハーバード大学で教授を務めた後、開成中学校・高等学校の校長を務めていたことでも知られる。

もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法
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大学、大学院、中学校、高等学校と、いろいろな年代の若者の学校教育に深く関わってきた柳沢氏が推薦するのは、『もう「反抗期」で悩まない!親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』(著:沼田晶弘/集英社)だ。選書理由について、こう話す。

「反抗期というネガティブな語感を持つ時期が、実は大人として自立するための自己主張の初歩的なトレーニングの開始時期だということをわかりやく述べています」

子どもが自己主張ができるようになったことを「成長」と捉えて、親が反抗期を受け入れることが、わが子を伸ばすことにもつながるという。著者は東京学芸大学附属世田谷小学校の教諭であり、子どもの自主性を引き出す授業で定評のある沼田晶弘氏だ。実際の保護者から寄せられた相談など、豊富な事例が掲載されており、子どもの年齢を問わず応用可能な「親側のマインドセット」について説かれている。

11. 『どこでも誰とでも働ける』(著:尾原和啓)

ボーク重子(ぼーく・しげこ)
ICF認定ライフコーチ、Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表

この「親側のマインドセット」は、時代の流れから考えても変える必要があるだろう。テクノロジーの進化と長寿化の進展などで人生設計の骨組みが大きく変わりつつあるからだ。

これまでは、いい大学に入っていい会社に入れば一生安泰ともいわれた。だが、グローバル化の進展で競争が激化する中、何十年もプレーヤーが変わらない業界は珍しく、新卒で入った会社が10年後もあるという保証はどこにもない。10年前にはなかった職業が次々と出てくるような時代に信頼ができるのは、いい大学でもいい会社でもなく自分自身だ。

世界で通用する子育てについて発信を続けるボーク重子氏は、これまで非認知能力を育成する重要さを繰り返し説いてきた。非認知能力とは、IQやテスト、偏差値のような数値化できる認知能力ではなく、従来の学力とは異なる数値化できない個人の特性による能力のことを指す。問題解決能力、計画性、柔軟性、心の回復力、自制心、やり抜く力、社会性、共感力などだ。

そんなボーク重子氏が薦めるのは、『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』(著:尾原和啓/ダイヤモンド社)だ。

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール
『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』(ダイヤモンド社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「変化の激しい人生100年時代の働き方は、これまでのトップダウンではなく『対等につながり共有する』ことが基本になっていきます。そんな社会では『どこで働いているか』『役職は何か』ではなく、『自分は誰で、何ができて、何のために生きているか』をしっかりと持ったプロフェッショナルであることが必須です。変化を乗りこなす大人に育てるために、まずは親がそんな働き方を体現して子どもを導いていくためのヒントが詰まった本です」

本書は、あらゆるチーム、どんな職場でも使える、自由に生きるための超実践的な仕事術をまとめている。実際、Google、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ねてきた著者の経験のすべてが詰め込まれているという。親の価値観が変わらなければ、子どもの教育も変わらないということ。ぜひ手に取ってみてはいかがだろうか。

(注記のない写真:尾形文繁)