教育専門家が選ぶ「子どもの教育」のいろいろな悩みを解決してくれる11冊 GWに読みたい!ほめ方・叱り方から勉強法まで

1. 『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(著:島村華子)

ブリティッシュコロンビア大学 大学院生
(写真:大川さん提供)
「わが子を天才に育てたい」。親ならば、誰もが一度はそう考えたことがあるのではないだろうか。天才はどう育つのか?どんな教育を受けてきたらそうなるのか、興味は尽きない。
現在、カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)の大学院で博士号を取得すべく研究を続けている大学院生、大川翔さんは誰もが認める天才だ。9歳でカナダ政府にギフテッドと認定され、14歳でカナダの高校を卒業し大学にも合格、18歳で学士号、21歳で修士号を取得して、現在22歳である。
幼少期について尋ねると「ごく普通の子どもだったと思います」と話す大川さんだが、とにかく本はたくさん読んだという。そんな大川さんが選んだのは、『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る 自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(著:島村華子/ディスカヴァー・トゥエンティワン) だ。大川氏は、推薦理由についてこう話す。

「児童発達学の専門家である著者が理論とデータに基づき無条件子育ての重要性を語る、具体例豊富な本。『おざなりほめ』や『人中心ほめ』ではなく『プロセスほめ』。具体的にほめ、自由回答式の質問をする。『ダメ!』『違う!』はできるだけ使わない。まさに僕がカナダで受けてきた教育です。3歳から12歳の子どもを対象にしたほめ方・叱り方の本ですが、『わたしメッセージ』や『アクティブリスニング』という手法は応用が利くと思います」
著者は、オルタナティブ教育として知られるモンテッソーリと、近年再注目されているレッジョ・エミリア教育の研究者、島村華子氏だ。「ほめる」「叱る」の声かけ次第で、親子関係や子どもの育ち方に大きな影響が見られるという。エビデンスに基づく最先端の教育メソッドを、具体的な声かけの仕方に落とし込んでおり、子どもを持つ親ならば一度は読んでおきたい1冊である。
2. 『超一流になるのは才能か努力か?』(著:アンダース・エリクソンら)

Mined COO
(写真:Mined提供)
一方で、さまざまな分野で活躍する方の中には「努力で一流に上り詰めた」と話す人も多い。才能か、努力かは、永遠の問いと言ってもいいだろう。
オンラインでライブ授業を配信するプラットフォーム「スコラボ」を展開するスタートアップ企業Mined(マインド)のCOO趙慶祐氏が選んだ本は、この永遠の問いに挑んだものだ。『超一流になるのは才能か努力か?』(著:アンダース・エリクソン、ロバート・プール/文藝春秋)である。
本書にはアスリートから音楽家、さらにはビジネスパーソンまで、世界中のトッププレーヤーたちを科学的に研究し、導き出された「超一流」の鉄則がまとめられている。趙氏は、この本を選んだ理由をこう説明する。
「世の中にはさまざまな学習や才能開発法を説いている本がありますが、その中の多くは著者の経験談にとどまっています。本書は、それぞれの分野の具体的な事例を基に、『卓越した人物』になる方法を分析しています。何世紀も議論されていたテーマである『才能VS努力』に明確な答えとエビデンスを提示し、『才能ではなく努力が重要』なのに『努力は必ずしも報われない』のはなぜなのかを解決してくれることで、さまざまな興味とゴールに対して迷いなく正対することができます」
著者の1人、アンダース・エリクソン氏は「なぜ、『超一流』になれる人となれない人がいるのか?」という疑問から30年以上にわたって「超一流」を研究してきた第一人者だ。世界中の論文や書籍への引用も多いという本書だが、努力の仕方には「正しい努力」と「正しくない努力」があるという。子育てはもちろん、親自身の成長にも生きる本といえそうだ。
3. 『未来のイノベーターはどう育つのか』(著:トニー・ワグナー)

Mined 代表取締役
(写真:Mined提供)
趙氏には、共同創業者がいる。前田智大氏で、Minedでは代表取締役を務める。2人はともに、名門の灘高等学校出身で、趙氏は東京大学、前田氏はマサチューセッツ工科大学で学んだ経歴を持つ。
そんな2人が運営する「スコラボ」では、主に小・中学生を対象に、1クラス4~6人以下という少人数でオンラインライブ授業を配信している。探究学習とSTEM(科学、技術、工学、数学)教育を軸に70コマ以上(授業時間は55〜90分)の授業を開催しており、いずれも1回1000〜2000円程度の買い切りチケットで受講できるのが特徴だ。
「子どもたちには学ぶことを好きになって、主体的に学ぶ力を身に付けてほしい」と話す前田氏は、向学心を育むことで子どもの将来の可能性を広げていきたいと考える。選んだ本は『未来のイノベーターはどう育つのか ――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(著:トニー・ワグナー/ 英治出版)だ。今あらゆる分野で求められるイノベーターの資質に迫る1冊である。