「認知症の発症リスク」を4割減らせる12の要因 予防医学の第一人者が教えるカギは「楽しむ」
認知症を発症し脳の神経細胞が死滅すると、記憶などの機能が失われる。しかし、残った神経細胞がネットワークを伸ばすことでその機能を代替できる。脳の神経細胞のネットワークが豊富なほど認知機能は衰えにくくなることがわかっている。脳に新しい刺激を与え、このネットワークを広げることが重要だ。
難しいことをやる必要はない。絵や手芸、楽器といった趣味や将棋などのゲーム、日記など手軽に始められるものから挑戦しよう。コミュニケーションでは可能な限りいろいろな人と話すことを意識したい。気の合う友人だけでなく、あまり話したことのない人とも会話することで脳へ新しい刺激を与えてほしい。
また、二次予防までの段階では、自身の低下した機能に特化して鍛える知的活動も有効だ。例えば日付や曜日が分からなくなるなどの見当識障害に対応する場合、日記など日付を意識的に考える活動をおすすめする。
栄養バランスが取れた健康的な食事を
A 今まで述べてきた中でできることに取り組んでほしい。しかし3次予防の段階では、新しいことに取り組むのは困難だ。本人が好きだった趣味を勧めてみるなど過去の楽しい記憶に基づいた予防法がいいだろう。
中度認知症でとくに介護者の負担となる、介護拒否などの行動・心理症状(BPSD)の進行を遅らせることも可能だ。介護をしていると心配するあまりつい叱ってしまうことがある。BPSDは本人にストレスがかかると表れやすい。お互いの負担を少なくするためにも、周囲に頼りながら、本人が安心できる環境を整えることがBPSDの予防につながる。
A なるべく多く野菜を食べるなど栄養バランスの取れた健康的な食事を意識してほしい。オリーブオイルを多く取る地中海式の食事や、塩分を控えた和食は認知症予防にいいとされる。だが、すべての食事を和食にしたりする必要はない。それぞれの食事で認知症予防にいいとされる食材、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む青魚やポリフェノールを多く含む緑茶などを意識的に摂取することから始めよう。無理なくバランスのよい食事を楽しんでほしい。
A 40代から始めても早すぎることはないというのが私の意見だ。認知症は65歳以上で発症することがほとんど。だが、4大認知症のなかで代表的なアルツハイマー型認知症では、発症の20年以上前から(発症の原因の一つとされる)アミロイドβが蓄積しはじめると分かってきた。つまり、発症の20年前、40代から予防に取り組めば、より効果的に発症を防いだり、遅らせたりすることができるだろう。
(監修 鳥取大学医学部 認知症予防学講座教授・浦上克哉)
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