人気ポップ歌手テイラー・スウィフトのコンサートチケットを巡る狂乱は、需要と供給、極端に高い人気といった要素では理解できない「スウィフトノミクス」による解説が必要だ。
全米ツアーのチケットを販売するチケットマスターのウェブサイトは、先週の前売り受け付け開始と同時に1400万人が殺到してクラッシュ。一般販売を停止するという異例の事態になり、限られたチケットは転売市場で急騰。最低価格4万ドル(約560万円)以上を提示する売り手も登場した。
こうした事態を受けて、スウィフトさんはチケットマスターを厳しく批判。「スウィフティー」と呼ばれるファンからは落胆と怒りの声が上がっている。この騒動の前から反トラストの点で米司法省が同社の調査に入っていたことが明らかになり、テイラー・スウィフト現象は政府当局や議員らを巻き込む問題に発展した。
ゴールドマン・サックス・グループが世界の音楽産業について毎年発表するリポート「ミュージック・イン・ジ・エアー」をまとめる同社アナリスト、リサ・ヤング氏は「危機の時代にコンサートは手の届くぜいたくと見なされる」と述べた。
メリーランド大学のメリッサ・カーニー教授(経済学)も、子どもたちのためにチケットを買えず落胆した一人だ。「ファンにとっては、これ以上に欲しいものは存在しない」と語る。「何が本当に大切で、何が自分を幸福にするのかについて、コロナ禍は人々の考え方を変えた」と述べた。同教授は転売市場でチケットを入手する可能性を探るという。