2030年、再エネ比率は30%ラインの攻防へ 経産省の有識者委員会で電源構成を議論
そのうえで橘川氏は、本来は伸びしろの大きい太陽光、風力発電の制約となっている送電線問題に関し、原子力発電所の廃炉によって余剰となる送電設備の活用、地産地消やパワーツーガス(余剰電力の気体転換)など送電線を使わなくて済む仕組みの構築、系統ネットワークの能力で評価される電力会社への転換の必要性を説き、再エネの世の中を創るために「パラダイム転換を打ち出す施策が重要」と語った。
また、全国消費者団体連合会の河野康子事務局長は委員会に提出した資料で、欧州諸国の再エネ目標を踏まえ、「早期に30%を実現、長期的にはそれ以上の野心的な目標」を設定すべきと主張。「再エネ普及の障害を挙げて、伸びないことを示すのではなく、障害を克服していく方向で考えていくべき」と説いた。
地熱、水力、バイオマスで原子力を代替へ
国際環境法・政策が専門の高村ゆかり・名古屋大学大学院環境学研究科教授は、不安定電源である太陽光、風力は送電線拡充費用でコストが変わるとしたうえで、コストのかからない広域系統運用による接続可能量の拡大や、原発廃炉に伴う送電線の余力活用も含めて試算を出すよう事務局に求めた。
加えて高村氏は、安定的なベースロード電源として原発を代替しうる地熱、水力、バイオマスに関する深掘りした施策の議論が必要、と語った。今回の経産省が出した導入見込み量の試算では地熱、水力、バイオマスの合計で1337億キロワット時、電源構成比で14%程度となる。これをどこまで伸ばせるかで、原発依存の低減度合いも変わってくる(東日本大震災前の09年度の原発比率は約30%)。
委員長の坂根正弘・小松製作所相談役は、「この委員会に対する国民の関心は原発を減らしてほしいということ。その大本は省エネと再エネしかない。その技術を徹底的に詰めることによって出た原資を、化石燃料と原発の比率を下げることにどう割り振るかだ」と述べ、まずは省エネと再エネを徹底して議論していく方針を示した。
また、再エネの意義はCO2削減とエネルギー自給率向上、としたうえで、「地熱、水力、バイオマスのような安定的な電源をもう少し重要視すべき」と語り、各再エネの特性やコストを踏まえ、バランスのとれた再エネ拡大を図る必要があると総括した。
この委員会は6月のサミットまでには一定の方向性を示し、12月の国連気候変動枠組条約「第21回締約国会議(COP21)」までに結論を出す必要がある。省エネと再エネの“野心的目標”をどう設定し、原子力依存度をどこまで下げるかが焦点。再エネについては、30年時点の電源構成比で30%超がターゲットになると見込まれる。そして省エネについては、電力需要の20%削減が一つの目安となりそうだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら