日本人が知らない米国中間選挙の「ヤバイ展開」 次の大統領選を左右する「選挙否定派」の存在
一方、民主党は人工妊娠中絶と、民主主義を選挙戦の争点にしている。6月に連邦最高裁判所が人工妊娠中絶を合法とする50年前の「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下したことは、中間選挙における民主党支持者の投票を促すだろう、と楽観していた。
ところがその矢先、新型コロナによるサプライチェーン混乱や、ロシアのウクライナ侵攻、政府によるパンデミック関連の景気刺激策などにより、インフレ率が40年ぶりの高水準を記録。ガソリンを含む物価高騰とバイデン大統領の支持率低迷が希望を萎えさせてしまった。
注目州の1つは「カンザス」
今回の中間選挙でも注目される州の1つが、伝統的に保守系が強いカンザス州である。
2020年の大統領選ではドナルド・トランプ前大統領が15ポイント差で勝利しているが、今年の夏の住民投票では人工妊娠中絶の制限を可能にする州憲法修正案に対して51%対49%の割合で反対したことが大きなニュースとなった。今回の選挙では、接戦と言われている州知事選、連邦議会選、州司法長官(法律、および法の執行に関する州の最高責任者)選が行われる。
中でも関心が高いカンザス州知事選は、民主党の現職ローラ・ケリー知事と、共和党の保守派デレク・シュミット州司法長官の一騎打ちとなる。シュミット氏が声高に叫んでいるのは、インフレ、経済、犯罪、低支持率のバイデン大統領とケリー知事との密接なつながり、そして「文化戦争」だ。
この場合の文化戦争とはトランスジェンダーに関する問題、例えば学校では出生時の身体的性別やジェンダーではなく、自身の性自認に基づいてスポーツに参加すべきだといった議論のことである。
シュミット氏の集会に参加したダン・バクジンスキーさん(65)は、インフレ、高い税金、トランスジェンダーのスポーツ参加、犯罪について懸念していると語った。製造技師である同氏は、「うちの会社の燃料代は月に約300ドルだったのが、今では1000ドルを超えている」と不満を漏らした。
一方のケリー氏は、シュミットはサム・ブラウンバック元知事のクローンだと主張。元知事による減税(後に撤回)のせいで、予算に穴が開き、学校への支出は削減され、州債の格付けは下がったと訴えている。ケリー氏はまた、自らが行った食品への州消費税廃止や、パナソニックによる40億ドル規模の車載用電池工場建設をカンザス州に誘致したことについても宣伝している。
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