"目黒蓮の意地"が昇華したドラマ「silent」の凄み "フジヒットドラマ"に共通する「3つの仕掛け」

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そう聞くと、作品の中での重なりも見えてくる。

坂元裕二脚本、有村架純、菅田将暉主演で昨年大ヒットした映画『花束みたいな恋をした』では、物語においてファミリーレストランが重要な舞台となっている。

同じく坂元作品のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)も、初回と最終回で、主人公の男女が会話をする場所としてファミレスが登場する。ちなみにこのドラマは、『silent』と同じ村瀬健氏がプロデューサーを務める。

2つの作品で、ファミレスは男女2人が心を通じ合わせる恋の始まりの場所としての役割を果たせば、恋が終わる場所、そして再び始まる場所としての役割も担っている。

(※ここから先は、一部ネタバレを含みますのでご注意ください)

silent』でも、ファミレスが主人公の紬(川口春奈)と湊斗(鈴鹿央士)の恋が始動する場所として機能する。交際を重ねている間も、2人はファミレスで会うことが多い。

一方、5話現在(11月3日)、今は交際していない紬と想(目黒蓮)が会うのは、おしゃれなカフェで、ファミレスが使われることはない。仲が深まっているカップルは「ファミレス」、まだそこまでいっていないカップルは「おしゃれなカフェ」――そのあたりの使い分けも見事で、2人の関係性の変化とともに会う場所が変わっていくのか、今後の展開に生きてくるかもしれない。

ちなみにロケ地となっている東京都目黒区・松見坂のカフェには、放送後、連日行列ができるようになった。

ファミレスが恋の深まっていく場所……と聞くと、「高級レストランとかじゃなくて大丈夫?」と思う方もいるかもしれない。だが、この作品が多くの人の心をつかむ背景には、そういった「背伸びしすぎない舞台設定」もあるだろう。

舞台地は、実在する街「世田谷代田」

「背伸びしすぎない舞台設定」は、主人公たちの住む街にも表れている。

街の所在は明示されていて、実在する駅、小田急線の世田谷代田駅周辺である。その名の通り、世田谷区の代田にある駅で、若者に人気のスポット・下北沢の隣駅ではあるが、急行は止まらず、「住みたい街ランキング」に入ることもない。

2006年に放送された下北沢が舞台のドラマ『下北サンデーズ』(テレビ朝日系)では、登場人物たちが「梅ヶ丘、豪徳寺、土曜の次はサンデーズ!」と小田急線の周辺の駅を列挙して叫ぶフレーズがあったが、そこでは世田谷代田が飛ばされていて、「世田谷代田の立場は?」とツッコミが入るなど、正直、存在感が薄めの駅である。

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