制裁下ロシア向け輸出で「中古車バブル」の大異変 平均単価は「140万円超」新車代わりの購入も
冒頭に紹介した富山はロシア向け中古車の一大輸出地だ。2021年度の伏木富山港の輸出貨物のうち、重量ベースでは実に58%がロシア向けの完成車両で占められている。「完成車と表記しているが、実際はそのほとんどが中古車だ」(富山県土木部港湾課)。
最近では「自動車の中古部品もコンテナに載せられてよく出ている」(複数の業界関係者)。トヨタや日産のロシア事業撤退で「パーツの輸出も加速するかもしれない」(同)。
富山県近辺でロシアと結びつきの深い港としては、伏木富山港の他に新潟港も挙げられるが、「現在、新潟からロシアに出る中古車はそれほどない」(佐藤理事長)という。
数ある日本海側の港の中で、伏木富山港がロシア向け中古車の輸出地として地位を確立できた背景には、「原木の貿易が深く関係している」(富山県土木部港湾課)。
富山新港は、かつて放生津潟という潟湖(せきこ)を掘り込んで造った港であったために、原木の水面貯木場として最適な水質だった。
ゆえにロシアから原木を積んだ大型船が何隻もやって来て、積み荷を降ろした後に空になった船内に、船員が「お土産」として中古車を積んで帰っていたという経緯がある。
ロシア向けの高値は続く見通し
日本からのロシア向け中古車輸出の全盛期は、業界では2008年頃と言われる。当時は、日本から世界に輸出された中古車のうち、およそ半分がロシアに買われていた。
伏木富山港のほど近くにある国道8号線では、「全盛期には輸出業者の営む店舗が道の両側にずらっと並んでいた」(富山県土木部港湾課)。
だが、「2008年以降、ロシアが自国産業を守るために原木の輸出関税を高めたことで、原木を運んでくるロシアの船が激減し、中古車を積んで帰っていくのも減った」(同)という。
足元で急増しているとはいえ、ロシア向けの中古車輸出台数は2008年の半分以下。中古車輸出全体に占めるロシア向けの割合も17%程度だ。ロシア向けの輸出台数が全盛期の水準に戻る可能性は低い。
ただ、ロシア・ウクライナ情勢がすぐに好転するとは言いがたく、「ロシア向け輸出は、高水準の台数と単価がしばらく続く」との見方が業界では強い。
現在、ロシア国内で新車を製造しているのは、国産大手のアフトワズぐらいだ。同社が6月に発表した自社ブランド「ラーダ」の最新モデルにエアバッグやABS(車輪ロック防止装置)が搭載されていなかったことが話題になった。
中古車輸出業者は「安全な日本の中古車は海外で根強い人気がある」と口を揃える。ロシアでは安全性に乏しい国産の新車よりも、日本の中古車を買おうとする動きが今後さらに加速するかもしれない。
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