制裁下ロシア向け輸出で「中古車バブル」の大異変 平均単価は「140万円超」新車代わりの購入も

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富山新港で積み込みを待つ中古車
富山新港で積み込みを待つ中古車には、ロシアで根強い人気があるトヨタのSUV「ランドクルーザー」もあった(記者撮影)

ロシア向け中古車輸出が、ここまで「バブル」の様相を呈しているのはなぜか。

まず、ウクライナ侵攻の影響による新車不足がある。3月以降、外資系の自動車メーカーは部品調達難などを理由にロシア国内での新車生産を基本的に停止しており、5月にはルノー、9月にはトヨタ、10月には日産自動車が相次いでロシア事業からの撤退を決めた。

経済制裁により、ロシアでは地理的に近い欧州からの新車輸入もストップ。日本からの新車輸入も事実上できない。ロシアで展開する日本車メーカーが輸入を停止していることに加え、日本政府が4月に600万円を超える乗用車の輸出を禁止したからだ。そうした結果、「ロシアでは新車代わりに輸入の中古車を購入する動きが加速した」(複数の業界関係者)。

ルーブル高でロシアのバイヤーが強気に

もう一つの要因がルーブル高だ。世界各国と中古車の取引実績があるビィ・フォアードの山川博功代表は、「2月下旬のウクライナ侵攻直後、ルーブルは一時的に暴落したが、その後は円安・ルーブル高が進み、ロシアのバイヤーが高価格でも日本から車を買えるようになった」と語る。

ルーブル相場は2022年1月に月中平均で1.75円だったが、9月には同2.64円にまで円安が進行。円に対しルーブルの価値が5割も高くなったことで、ロシアのバイヤーが強気になり、以前よりも少々高い価格でも中古車を買うようになっている。

ウクライナ侵攻の長期化、それに伴う禁輸措置の厳格化により、ロシア国民は車不足にあえぐ。ロシア国内の中古車流通も様変わりした。佐藤理事長によると、ウクライナ侵攻前はロシアの西方向けに流通する中古車の多くはドイツからだった。

しかし、「侵攻後は欧州から車が入らなくなったので、今ではわれわれにモスクワからも注文が入るようになった。ロシア国民はそれだけ、車がなくて困っているのだろう」(佐藤理事長)。

日本から輸出された中古車は海路でウラジオストクに運ばれた後、鉄道に載せられて西方に運ばれているという。

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