北の鉄路切り捨て鈴木知事「夕張市長時の問題点」 「攻めの廃線」どころか、衰退が止まらない

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夕張支線の廃止・バス転換については、バスの便数が増便され鉄道時代よりも便利になったことがことさらに主張されたが、夕張市内の路線バスの利用者数は減少傾向が続き、市内のバス路線を一手に担っている「夕張鉄道(夕鉄バス)」のドライバーの高齢化問題が重くのしかかる。同社担当者によると「夕鉄バスのドライバーは過半数が50代以上。便数の維持についてはいずれ協議をしなければならない時期が来る」と将来的なバス路線の持続可能性については不透明な状況だ。

さらに、鉄道があることによって夕張を訪問していた観光客も消滅した。ソーシャルゲームアプリ「駅メモ!」を運営するモバイルファクトリーによると、夕張支線各駅への訪問者については、廃線となる2カ月前から現地で位置登録する人が増え始め、1カ月前に2~3倍に増加。廃線の翌月以降は従来の半分からそれ以下になるという推移を示したという。沼ノ沢駅の駅舎内で営業していた「レストランおーやま」も夕張支線の廃線後ほどなくして廃業した。

結果、この「攻めの廃線」がその後の北海道の鉄道網縮小の流れを作ってしまい、留萌本線をはじめ道内各地の鉄道路線の廃止が加速する。トラックドライバー不足も深刻化し鉄道貨物が見直されようとしている中、北海道の豊富な農水産物の輸送が今後、困難になるという問題も表面化しつつあるばかりか、東急の豪華クルーズ列車の運行にも影響が出るおそれがある。

観光施設を中国系企業に売却後、倒産

鈴木氏は、攻めの廃線を提案した翌年の2017年4月、夕張市が所有する「ホテルマウントレースイ」「マウントレースイスキー場」「ホテルシューパロ」「合宿の宿ひまわり」の観光4施設を破格の2億4000万円で中国資本の「元大リアルエステート」に売却する。また、これらの施設の運営会社だった「夕張リゾート」と国の登録有形文化財であった「夕張鹿鳴館」も同社へ売却された。

市所有の施設が安値で売却された背景には、元大が従業員の継続雇用に加え、長年にわたって施設の運営と地域活性化を行うという同社呉社長と鈴木氏との口約束があったことが市議会議事録における鈴木氏の発言で明らかになっている。また、物件の売却時に通常は契約書に盛り込まれる転売禁止事項も設定されることはなかった。さらに、呉社長と鈴木氏による記者会見も開かれ「元大が夕張市に対し100億円規模の投資を行い、中国人をはじめとした大勢のインバウンド観光客を夕張に呼び込む構想」があると報道された。

結局、この約束は果たされることはなく、攻めの廃線が実施された2019年4月、元大は夕張市から格安で買い取った4施設と運営会社を約15億円で香港系ファンドに転売した。

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