黒人男子を「リトルモンキー」と呼んだ議員の末路 ロス市民が激昂した差別発言のオンパレード

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カワイ氏は過去15~20年間に、ロス市議会にアジア系の議員が1人を除いてほとんど存在しなかったことを指摘する。近郊のトーランス市議会などではアジア系の議員の力が非常に強い。だが、リトル東京やコリアタウンなども管轄内であるロス市議会では、アジア系議員の存在感が歴史的にほぼ皆無に等しい状況なのだ。

「アジア系住民はモデル・マイノリティと呼ばれ、優等生的なステレオタイプで見られていることが多いが、実はロス市内で貧困に苦しむアジア系住民も年々増えていることはあまり知られていない」とカワイ氏。アジア系議員が市議会にいなければ、アジア系貧困層の声も意思決定の場に届きにくいというわけだ。

コリアタウン近郊に住むシャキール・ラフマンさんは「マルティネスの録音音声を聴けばはっきりわかるが、彼女は反黒人キャンペーンと同様に、反貧困層キャンペーンを徹底して強化しているのが特徴だ。コロナ禍で職を失った最も貧しい人々や、ホームレスの人々を圧迫しようとする市政に彼女は舵を切っている。それは何も今、始まったことじゃない。単に録音のリークではっきり可視化されただけ」と話す。

男性、アジア系男性
コリアンタウンのバングラデシュ系コミュニティに住むシャキール・ラフマンさん(写真:筆者撮影)

「甘い言葉で貧しい人から票を得た」

今回、市役所の建物の前で、マルティネス議員に対する抗議運動をしていた人々の中には、賃貸住宅の家賃の急激な高騰により、家賃が払えずにアパートから追い出される人々を助ける「ロサンゼルス・テナント・ユニオン」のメンバーが多かった。

「マルティネス議員がかかわったこれまでの政策をすべて調査して、裏取引や汚職が発覚したものは、全部無効にしてほしい」と語るのは、ケニア・アルコサーさんだ。先住民族の血をひく彼女は2歳の息子を連れて市議会に抗議にやってきた。「甘い言葉で貧しい人間の1票を取り込んで、票を集めていざ議員になったら、貧しい人間を排除して自分の政治権力を伸ばすだけの人間は辞任してほしい」と彼女は訴える。

そして10月12日の午後、ついに高まる批判に耐えかねてか、マルティネス議員は辞職する声明を発表した。その辞職声明文に有権者への謝罪はなく、そのかわり、彼女をロールモデルとしてきたラテン系の少女たちに向けて「頑張って」と書かれていた。

「ラテン系の政治家たちがこれまで長年ロスで築いてきた信頼を、自分の手でボロボロにしておいて、ラティーナの少女たちにエールだと? いいかげんにして」。そんな怒りのツイートがネット上に洪水のようにあふれかえった。

長野 美穂 ジャーナリスト

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ながの みほ / Miho Nagano

米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙記者として5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社に勤務した経験もある。

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