岸井ゆきの、売れても「等身大の自分」求める理由 仕事を居場所にしたくない、戻る場所は別にある
樋口:なるほど! 堅実ですね。ちなみに岸井さんが好きな映画『悪魔の住む家』(※)もフィクションなのはご存知です?
岸井:え⁉ あれは今でも本当にあると思ってた!(ショック)
樋口:BS NHKで作品の舞台裏が放送されていたんですけど、全部作り物だったそうです。あの家で人殺しがあったのは事実だけど、後から住んだ人たちが語った怪奇現象は、お金がなくてひと儲けするための作り話だったそう。彼らが出て行ったのは、家賃が払えなかったからだとか。
岸井:えええ〜!(呆然)ある意味、本当のホラーですね(笑)。
「思ったら伝えておかないと後悔するなって思いました」(岸井)
樋口:岸井さんは海外の映画祭に出るのが夢だそうですが、今後共演したい監督や俳優がいたら教えてください。
岸井:もう何度かご一緒しているんですけど、黒沢清監督とはもう一回やってみたいですね。あとずっとご一緒したいと思っていたのは、今年亡くなられた青山真治監督。またいつかと思っていたんですが、こういうことになって、思ったら伝えないと後悔するなって本当に思いました。言ってもタイミングや巡り合わせで一緒にできない事も多いけど、きちんと言葉にしていこうと思いましたね。
樋口:そうですね。だから今回、『余白』を出版されたのは良かったと思います。岸井さんの人となりが伝わってきますし、応援したくなりましたから。
岸井:ありがとうございます。
樋口:本の中で感心したのが、「仕事を居場所にしたくない、戻る場所は別にある、ここではない場所に信じられる人が待っている、そう思えることが私の救いになっている」という部分。浮き足立たないで、等身大の自分でいたいという岸井さんの真摯な姿勢に胸打たれました。だから、こういう役ができるんだなってすごく腑に落ちました。
岸井:それは大切にしているところですね。
樋口:次の映画も楽しみにしています。
岸井:はい、頑張ります。今日はありがとうございました!