岸井ゆきの、売れても「等身大の自分」求める理由 仕事を居場所にしたくない、戻る場所は別にある
樋口:岸井さんはプライベートではご結婚されていませんが、夫婦の“倦怠感”をよく出せているなと思いました。「まったくうちの夫はどうしようもないな〜」って奥さんの不満たらたらな感じと、それにまったく気づいてない夫の鈍感な感じがすごくリアル。役作りはどうやったのでしょう?
岸井:今回は役作りというより、自分の家族をずっと見てきた中で得た感覚なんです。うちの家族はすごく仲がいいですが、365日一緒にいると当然色々なことがあって。そんな何かに、ふと気付くのはやっぱり母なんです。母からは「お父さん、こんなこと言ってきたんだけど⁉」とか他愛のない愚痴をよく聞きましたが、父からは全然なかったなと。
樋口:やっぱり男性は鈍感で、気付くのは女性なんですね。
岸井:そうですね。今回は、そういう夫婦の “連鎖”が日和と裕次郎の間にも始まっているんだろうなって思いながら演じました。
樋口:思い出してみたら、自分の両親もそうでしたね。ああ、でもうちは今、妻が忙しいので僕が育児を担当しているんで、僕のほうが愚痴ってるかも……。良くないっ(笑)。
岸井:そうなんですね! アハハ。
「『お腹痛くて機嫌悪い』ってはっきり言っちゃいます(笑)」(岸井)
樋口:それにしても日和と裕次郎のヤキモキ感って、いい意味ですごく日本人的ですよね。もし欧米の人たちが見たら、「なんで我慢するんだろう」「なんで離婚しないの?」って不思議に思うでしょうね。やっぱり日本人には相手を思いやる文化があるから。
岸井:そうですよね。特に夫への不満を掲示板の書き込みで発散するっていうのは独特かもしれない(笑)。なんの解決にもなってないけれど、それで満たされてしまうという。
樋口:世の男性は、どうやって女性のイラッとしているサインをキャッチしたらいいのでしょうか。
岸井:え〜、難しい! ただ、「察して」というのも日本独特ですよね。海外の映画を見ていると、女性も自分の気持ちをきちんと伝えますし。私自身は「察して」みたいなのはあまり好きではないので、例えば体調悪くて機嫌悪かったら「お腹痛くて機嫌悪い」ってはっきり言っちゃいます(笑)。そのほうが、自分も周りも楽になるかなと思って。
樋口:確かに男性は(女性が)イライラしているとか、ましてやその理由にもなかなか気付けないから、言ってもらったほうがうれしい! この映画はパートナーと見に行くことを推奨したいですね。女性も男性も“教え”にしてほしい。