和歌山電鉄から学ぶ「ローカル鉄道」再生の秘訣 両備ホールディングス小嶋会長インタビュー
――新型コロナウイルスの影響で観光客が激減し、今後も災害などの影響で観光客が激減する可能性は十分考えられますが、それでも観光列車は必要なのでしょうか。
乗客全員が観光目的であり、商売として成り立つのであれば必要だが、成り立たないのであれば地域住民の暮らしに影響はないため不要だ。しかし、その観光列車を地域住民も利用している場合は、運行をやめれば生活に支障が出るため運行すべきだ。
――観光客だけでなく一般の乗客も新型コロナウイルスの影響で減少し、従来から経営状況がよくない地方の鉄道がよりいっそう厳しさを増しています。こうした鉄道はビジネスとして成り立たないものなのでしょうか。
日本において、鉄道を含む公共交通の多くは民設民営で行われているが、民間に任せきっている国は先進国では日本だけで、欧米諸国は公設民営という方式が多く採用されている。
公設民営とは、固定費となる鉄道の線路や、駅舎などを「公」が設置し、運行を「民」が行う方法であり、(民間の固定費負担を「公」が引き継ぐ)上下分離方式とは成り立ちが異なる。
和歌山電鉄の再建を引き受けた理由
――不採算であれば運営方式に関係なく事業をやめるという選択肢もあると思うのですが。
実際、地方における通勤通学のうち約9割の人がバスや電車以外の手段を利用しており、公共交通がなくても関係ないと思う人はいる。しかし、公共交通を不要だと判断すると、「交通弱者」と呼ばれる人たちをはじめ、生活や移動のために必要な移動手段を奪う形になる。
――公共交通というのは基本的に必要という前提になるわけですね。
社会にとって不特定多数の移動手段として公共交通はエッセンシャルサービスであり、どのように残していくのかというのが1つのテーマとなる。この前提が崩れると乗る人がいなければ、最適な移動手段を検討せず安直に「バスでも走らせたらいい」とか「バスもなくなればデマンドタクシーのようなものでもいいのではないか」ということになる。
――和歌山電鉄の再生をなぜ引き受けたのですか。
和歌山電鉄は地方を走る鉄道なので、民設民営では当然成り立たない。しかしながら、公設民営であればある程度の経営は成り立つということを証明するため、実証実験として引き受けた。当時の制度では公設民営がうまく機能しなかったため、南海電鉄が和歌山電鉄に対し、施設や駅舎などを無償で寄付することで効果を同じにし、実証した。結果的に国の制度として公設民営が確立した。
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