日韓"急接近"でも「徴用工問題」が解決しない真因 韓国側は岸田首相の「お返し」に注目している

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これは10年前の調査開始以来最も大きな改善で、特に韓国の変化が著しい。特筆すべきは、韓国人の間で中国への警戒が高まっており、日本人が以前から抱いている印象に近づき始めていることである。

とはいえ、3国間安全保障協力は依然として、日本の朝鮮植民地支配から生じた戦時中の歴史問題の解決にかかっている。日米韓の政権関係者は未来に目を向けることの必要性を強調する一方、歴史問題が日韓関係を再び冷え込ませかねない「ダモクレスの剣(つねに存在する危険)」だということも理解している。

問題解決に向けた話し合いは行われている

目下の注目は「徴用工問題」だろう。戦時中に日本の鉱山や工場で徴用工として働かされた朝鮮人に対する賠償の問題を解決しようとする試みはいまだ行き詰まっており、徴用工を用いた日本企業の資産について韓国の裁判所が下した現金化命令の確定が迫っている。

日本当局は公式には、韓国が徴用工問題解決に向けて具体的な提案をするのを待っていると主張し続けている。しかし、この問題に携わる複数の韓国当局者や関係者によると、提案はすでに出され、両国の外務省の局長レベルで活発に議論されており、直近には11日にソウルでそうした場が持たれたという。

長年にわたり個人的な友好関係を持っている日本の林芳正外相と韓国の朴振(パク・チン)外交部長官は、詳細にわたる協議を行っており、直近にはニューヨークの国連総会で会談している。

韓国からの提案は、趙賢東(チョ・ヒョンドン)外交部第1次官の主導により今年夏に設立された官民協議会から出されたものだ。韓国の案は、最大300人の韓国人被害者を対象に、2014年に韓国政府が設立した既存の基金「日帝強制動員被害者支援財団」を通して賠償金を支払うというものである。

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