アニサキス・アレルギー、意外に知らないカラクリ 「アニサキス症とは別物」、発作抑える魚の選び方

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海の魚はノーと宣告を受けたけど、本当に世界中のすべての魚が摂取不可なのか、と思い始めた。取材や調査は本業だ。「魚、食いたい」の一心が出発点だが、魚や海の寄生虫の生態、水産業や養殖事情などを自分で調べてみようという気になった。

1974年刊行の日本水産学会編集『魚類とアニサキス』(恒星社厚生閣刊)という専門書を見つけた。専門家が魚市場で取引される魚介類を徹底的に調査して、アニサキスの寄生の有無が一覧表で表示してあった。救われたと思った。

主犯はオキアミ、それを食べた魚が危ない

精読・精査して、アレルギーの素であるアニサキスの生態も把握できた。犯人はアニサキスの幼虫をえさとするプランクトン(南極海などを除けば、日本近海も含め、主としてオキアミ)である。

アニサキスは「最終宿主」の海中哺乳類(くじら、いるか、あざらしなど)の内臓の中で卵を産む。海中哺乳類が排泄物(はいせつぶつ)を垂れ流すとき、アニサキスの卵も一緒に海中にばらまかれる。海中で孵化(ふか)したアニサキスをオキアミが捕食し、アニサキスはオキアミの体内に寄生する(オキアミが「第1宿主」)。

次に魚介類がオキアミを食べる。オキアミの中のアニサキスは、今度は魚介類のはらわたやえらに寄生する(魚介類が「第2宿主」)。その魚介類をくじらなどの海中哺乳類が飲み込む。一緒に海中哺乳類の体内に入ったアニサキスは、海中哺乳類の内臓で成虫となり、産卵する。こういう循環で生息しているようだ。

アニサキスの感染ルート
(イラスト制作:塩田翼)

あれこれと調べているうちに、知らなかったアニサキスの生態と生息循環がわかってきた。

オキアミを捕食する魚にはアニサキスが寄生するが、アニサキスの第1宿主はほぼオキアミに限られているため、生態上、オキアミを捕食しない魚や、捕食する条件と状況がゼロの魚にはアニサキスはいない。オキアミを捕食しない魚なら、アニサキスは無縁だ。

オキアミは海にしかいないから、あゆ、にじます、いわな、わかさぎ、ふななどの川魚や淡水魚は問題外である。海の産物でも、魚類ではないえび、かに、たこ、貝類はオキアミを捕食しないから、心配ない。いかは、こういか、あおりいか、剣先いか、もんごういかなどは無関係だが、するめいかだけはアニサキスが寄生するので食べてはいけない。特にするめいかのわたをエキスとするいかの塩辛は禁物だ。

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