広島サミットで退陣説も!岸田首相、国葬後も窮地 10月3日からの臨時国会も防戦一方が確実
「故安倍晋三国葬儀場」との大看板を掲げた日本武道館での式典で、政界関係者の注目を集めたのは、岸田首相と菅義偉前首相の追悼の辞だった。一般の葬儀での「喪主」と「友人代表」という立場だけに、両氏がどのような言葉で故人を悼むかが、式典での大きな政治的見せ場だったからだ。
本物の喪主は当然、安倍氏の昭恵夫人だが、式典では葬儀委員長の岸田首相が「喪主」の立場。追悼の辞では想定どおり「あなたが敷いた土台の上に、持続的ですべての人が輝く包摂的な日本、地域、世界をつくっていく」などと述べ、内政・外交両分野で安倍氏がつくり上げた「遺産」の継承を誓った。
これに対し、史上最長記録を更新した安倍政権の大部分を官房長官として支え続けた菅氏はとつとつとした語り口ながら、「あらゆる苦楽を共にした7年8カ月。私は本当に幸せだった。日本にとって真のリーダーだった」と心情を吐露して盟友・安倍氏をしのんだ。
「政治的に見れば、まさに“追悼の辞対決”」(自民長老)との位置づけだからこその注目度の高さ。結果は、「当たり障りのない儀礼的な内容」に終始した岸田氏に対し、菅氏は安倍氏との突然の別れの悲しみと悔しさを、思い出話も絡めて切々と語ってみせた。
岸田氏の言葉にはほとんど表情を変えなかった昭恵夫人も、菅氏の涙交じりの語りかけには感極まったように、ハンカチで涙を拭った。そして終了時に会場から沸き起こった拍手が、「菅氏の完勝」を物語っていた。
「ポスト岸田」の主導権は菅氏が握る?
官邸関係者によると、時の首相らの追悼の辞などは、いわゆるスピーチライターが全面サポートするのが常識だという。ただ、岸田首相が読み上げたものは「秘書官など官僚が事務的に作ったとしか思えない内容」(専門家)で、あくびをかみ殺す参列者もいた。
これに対し、菅氏は「自らの思いを、遺族や参列者にどう伝えるかを練りに練った表現」(同)で祭壇の安倍氏の写真に語り掛け、感謝の言葉で締めくくると、参列者の多くが異例の拍手で称えた。
まさに菅氏の完勝だったが、「勝負の分かれ目は安倍氏との本当の絆の深さにあった」(自民長老)との指摘が多かった。「本音と儀礼の差が、そのまま、両氏の安倍氏との親交の深さや濃密さの違いを浮き彫りにした」(同)という分析だ。
この結果について、政界の口さがない向きは「岸田首相は『安倍さんの遺志を引きつぐ』と繰り返したが、菅さんは『本当の後継者は俺だ』とアピールした」(閣僚経験者)と解説する。確かに「今後岸田政権の危機が深刻化すれば、ポスト岸田の主導権は菅氏が握る」(同)という展開は十分想定されるからだ。
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