知られざる日本の暗部「子の死因検証」が進まぬ訳 なくならない保育事故、遺族が「CDR」に望むこと

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12年前の出来事は、栗並夫妻にいろいろな“暗部”を見せつけた。とくに目についたのは、真相究明の調査に消極的で、互いに責任を押し付けあう行政同士の姿だった。事故や自殺などで子どもの命が失われるたび、真相究明に及び腰な当局の姿勢がいつも問題になる。栗並さん夫妻の例もまさにそうだったわけだ。

寛也君を亡くした後、えみさんらは事故の調査に着手しようとしない保育園を見切り、保育園を指導・監督する立場の愛知県に対して、専門家を交えた第三者委員会を設置して、調査するように求めた。しかし、県は「碧南市が対応すべきだ」と取り合わない。そのため、えみさんらは、県が主体となって事故の原因究明と再発防止策を検討するよう求める署名活動に乗り出した。

開始から4カ月ほどたった2012年2月、約3万筆の署名を集め、県知事に提出。さらに3カ月が過ぎた5月、医師や弁護士らでつくる県と市の第三者委員会がようやく設置された。この時点で、寛也君の死から1年半もの時間を要している。事故の原因を知りたいだけなのに、なぜこんなに時間がかかるのか――。

一定の役割を果たした第三者委員会

それでも第三者委員会は一定の役割を果たした、とえみさんは考えている。委員会は、寛也君を1歳児クラスへ移すなど保育形態が変更されたにもかかわらず、保育士の見守りが不十分な状態だったとして、園側の対応に問題があったと指摘。そのうえで、愛知県と碧南市の検証遅れについて「事態を正確に把握することを困難にする」と批判した。

要は“なぜ調査の着手に尻込みしていたのか、もっと早くに取りかかるべきだった”ということだ。

えみさんがプラスに考えているのは、その先だ。

第三者委員会の報告を受けて、愛知県は重大事故時には第三者委員会を設置することなどを盛り込んだ指針を作成。碧南市は、保育事故に関する検証委員会を常設した。

さらに、えみさんらは、厚生労働省にも出向き、保育施設で起きた事故の調査や報告の義務づけを要望した。そうした訴えが通じ、2014年9月、再発防止策を議論する政府の検討会が設置され、えみさんは委員となって出席。2016年4月からスタートした有識者会議でも委員として加わり、保育事故防止に向けて意見を述べてきた。

栗並えみさん(筆者撮影)
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