円が対ドルで140円前半、24年ぶり安値水準記録 米大幅利上げ継続で金利差狙った円安はまだ続く
東京外国為替市場では円が対ドルで一時1ドル=140円半ばまで下落し、24年ぶり安値を更新した。堅調な米経済指標を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げ継続の観測が強まる中、米雇用統計の発表を前に日米金利差を意識した円売り・ドル買いが続いた。鈴木俊一財務相は最近の為替相場の変動について「やや大きくなっている印象」と述べたが、円相場への影響は限定的だった。
米金融当局がインフレ沈静化まで積極利上げを続ける姿勢を明確にする一方、日本銀行は金融緩和を堅持する姿勢を崩しておらず、日米の金融政策の格差に着目した円売り・ドル買いが再び勢いづいている。1日の米国市場では堅調な米経済指標を米金融当局が大幅利上げを続ける根拠になるとの見方が広がり、1ドル=140円の大台を突破。チャート上では1998年8月に記録した147円66銭まで目立ったポイントが見当たらず、円の下値めどが見えにくくなっている。
米アトランタ連銀のボスティック総裁は1日、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局のインフレ抑制の取り組みはまだ完了していないとの認識を示した。同日発表された8月の米供給管理協会(ISM)製造業総合景況指数は拡大と縮小の境目を示す50を上回り、8月27日終了週の米新規失業保険申請件数は市場予想を下回った。
2日には9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅を占う上で注目の8月の米雇用統計が発表される。市場予想では非農業部門雇用者数は前月比29万8000人増加と、健全だが比較的緩やかな伸びとなる見込み。失業率は50年ぶり低水準の3.5%にとどまる見通しで、労働需給のミスマッチが長引く中で賃金の着実な伸びも予想されている。
米金利先物動向によると、9月のFOMCで0.75ポイントの利上げが約73%の確率で織り込まれている。金融政策の影響を受けやすい米2年債利回りは1日に一時2007年11月以来となる3.55%付近まで上昇。2日アジア時間の取引では3.50%前後で横ばい推移となっている。
鈴木財務相は2日の閣議後会見で、「最近の為替相場の変動は、やや大きくなっているなという印象を受けている」とし、急速な変動は望ましくなく、為替市場の動向を「高い緊張感を持って注視」すると述べた。
市場関係者の見方
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎アナリスト
- 米雇用はかなりひっ迫しており、今晩のデータも利上げを和らげてもいいというような弱い結果が出てくる可能性は極めて低い
- 米雇用統計が予想通り強い結果なら、9月の0.75ポイント利上げの可能性が強まり、そうなると米金利も上がり、ドル・円は上昇余地がある
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジスト
- ドル・円は真空地帯に入ってしまった。140円を突破したので、新たなレンジを模索しに行く動きになるのだろう
- 日本の当局の口先介入があっても、市場はほとんど聞く耳を持たずということだと思う
- 円安だからといって日本銀行が金融政策を変更することはないということははっきりしているので、市場は安心感を持っているかもしれない
- 米雇用統計は予想を下回る可能性の方が高いと思うが、よほどのことがない限り、市場の9月FOMCでの0.75ポイントの利上げの織り込みがすぐにひっくり返ることは恐らくない
More stories like this are available on bloomberg.com
著者:小宮弘子
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら