8月20日、ロシアのモスクワ郊外で、若手政治学者でジャーナリストのダリア・ドゥーギナ氏(29)が爆殺された。
ロシアの著名思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏が20日、モスクワ郊外で運転していた自動車が爆発して死亡した。同国メディアが報じた。爆弾が仕掛けられた可能性があるという。ドゥーギン氏はプーチン大統領の外交政策に影響を与えるとされ「プーチン氏の頭脳」と呼ばれることもある人物だ。
爆発したのはドゥーギン氏の自動車で、同氏が狙われた可能性がある。ドゥーギン氏はロシアがロシア語圏を統一することなどを主張する極右思想家と指摘される。著作はロシア政府の強硬派に愛読され、プーチン氏が2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合し、東部を実効支配する決定を後押ししたとされる。一方、米メディアによると、娘のダリア氏はジャーナリストでロシアによるウクライナ侵攻を支持し、米国と英国による制裁対象になっていた。(8月21日「日本経済新聞」電子版)
西側でのドゥーギン氏とは
日本や欧米のマスメディアはドゥーギン氏を「プーチンの頭脳(ブレーン)」と報じているが、この認識は実態から乖離している。この点については、フランス出身で現在は米ジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所所長のマルレーヌ・ラリュエル氏の実証研究が参考になる。
西側のウォッチャーたちは、2000年代初頭以米、プーチンの仮定のイデオロギー教祖を探し続けてきた。この役割は伝統的にアレクサンドル・ドゥギンに割り当てられてきた。西側の専門家たちは、ユーラシア主義の用語法を広めた彼の役目ゆえに、誤って彼を「プーチンのブレーン」だと信じてきた。しかしながら、これまで見てきたように、ドゥギンは国家機構の中に帰属するポジションを得ることはできず、彼の理論は、より「使え」て、過激ではないイデオロギーの策定者と競うにはあまりにも神秘主義的であった。
ユーラシア理念の成功は完全に彼の手を離れ、何の制度的見返りももたらさなかった。彼のさらに過激な理論は、国家機関からまったく相手にされなかった。(マルレーヌ・ラリュエル[浜由樹子訳]『ファシズムとロシア』東京堂出版、22年、266~267ページ)。
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