「ものづくり大国・日本」だからこそ実現できる、STEAM教育とはいったい? なぜインター校では「掃除機を分解させる」のか

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日本では2030年にIT人材が約45万人ほど不足すると予測されている。一説には、79万人の不足という試算もあるほどだ。世界でもその傾向は顕著である。例えばAmazonでは、米国で働くソフトウェアエンジニアなどの基本給の上限を年4000万円にするなど、IT人材の不足が顕在化している。日本でもIT人材の給与が医者の年収を超える時代が間もなくやってくるだろう。そこで注目が集まっているのがSTEAM教育だ。実際、国内のインターナショナルスクールでは、このSTEAM教育にMakers(ものづくり)と起業家教育の要素を取り入れ、ITで稼げると同時に社会課題を解決できる新たな人材育成の教育プログラムを実践している。今回はインターナショナルスクールにおけるSTEAM教育の動向、そして日本のSTEAM教育の将来について、国際教育評論家の村田学氏に話を聞いた。

インターナショナルスクール=「英語習得」にあらず

これまでインターナショナルスクールで学ぶ最大のメリットといえば、英語力の獲得を思い浮かべる人が少なくなかっただろう。しかし、そんな認識はもはや時代遅れとなりそうだ。世界のトレンドに敏感なインターナショナルスクールでは、今や英語を通して、STEAM×Makers×起業家教育を探究的に学ぶ時代に突入している。

デジタル社会の進展によってIT人材が脚光を浴びる時代。GAFAM(※)といわれる巨大IT企業集団では、数千万円台の年収を提示して、優秀なIT人材の獲得に躍起になっている。日本では変化が激しく将来を見通せない時代を反映してか、優秀な学生ほど食いっぱぐれがなく、高給を望める医者を志望する傾向にあるが、世界では“ITエリート”が“医者”を軽く超えてしまう年収を稼ぎ出しているのだ。しかも彼らは起業家として通用する人材であり、世界が抱える社会的課題を解決すべく、自らが立ち上がって社会変革をリードしようとしている。

※ GAFAM(ガーファム)とは、米国の巨大IT企業であるグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook/現・Meta)、アップル(Apple)、マイクロソフト(Microsoft)の5社の頭文字を並べて作られた言葉

日本のインターナショナルスクールでは2000年以降、STEAM教育に加え、Makersや起業家教育に力を入れており、入学志望者も増え、人気が高まっている。国内ではインターナショナルスクールの開校も相次いでおり、中には高等専門学校が丸ごとインターナショナルスクール化した事例もある。卒業生たちも東京大学や各大学の医学部などの国内難関大学だけでなく、米国のアイビーリーグなどの大学に進学するケースが増加しており、その中から巨大IT企業や国連など国際機関の一員となって、自らの能力を最大限に生かそうとする日本人の若者たちが目立つようになっている。

インターナショナルスクールタイムズ編集長で、インターナショナルスクール関連のコンサルティングを務めている国際教育評論家の村田学氏は次のように語る。

「デジタル社会が進化していく中で、社会的課題を解決するにはゼロベースから物事を考えていくことが必要となってきます。それにはSTEAM教育が欠かせません。日本の学校でもSTEAM教育は活発になっていますが、プログラミングなど“知識を習得する”授業が中心となっており、STEAM教育本来の“体系的な学び”を実践しているケースは非常に少ないように思います。一方、インターナショナルスクールでは従来、英語力の獲得とともに、ディスカッションによる探究的な学習が行われてきました。最近では、そこにSTEAM教育がプラスされ、より実践的な学びが行われるようになっているのです」

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